研究課題/領域番号 |
26861048
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大原 利章 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40623533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 / 鉄 / 血管新生 / 分子標的薬 |
研究実績の概要 |
申請者は癌と鉄との関係に着目し、体内鉄を減らしたうえで(除鉄)、血管新生阻害薬(ベバシズマブ)を投与すると高い抗腫瘍効果が得られる事を発見した.本研究では血管新生阻害薬の除鉄誘導効果(増殖抑制効果と代償的血管新生作用)の応用による抗腫瘍効果増強の理論的な実証と臨床症例の解析による臨床応用への準備を目的とする. 1.ベバシズマブ以外の血管新生阻害作用を有する分子標的薬(ソラフェニブ)を除鉄状態で併用し、同様の除鉄誘導効果が得られる事を実証する研究 in vitroでは肝癌細胞株を用いてソラフェニブに対して鉄キレート剤(デフェラシロックス)を併用する事で抗腫瘍効果の上乗せが認められ、ウエスタンブロット法による検討では併用すると細胞周期を止めるだけでなくアポトーシスの誘導も認められた。 2.体内鉄の血管新生阻害薬に対するバイオマーカーとしての有用性について検証を行うために結腸・直腸癌に対して前向きの観察研究を行う研究 岡山大学病院消化管外科での結腸・直腸癌のベバシズマブ投与予定症例に対して鉄関連マーカーとベバシズマブとの奏功度について前向きの解析を行う計画で、本年度は予定通り症例の集積を行った。 3.肝臓癌を対象にソラフェニブに除鉄を併用した前向き臨床研究の開始準備を行う研究 ソラフェニブ投与症例の後ろ向き解析を岡山大学関連4施設を対象に、体内鉄関連マーカー(TIBC、フェリチン、血清鉄)と奏功度、予後、無増悪生存期間についての解析を行った.58症例について検討ではカットオフを中央値で分けるとTIBC高値、フェリチン低値の群(体内鉄低値群)で予後が有意に延長されている事が明らかとなった。血清鉄の検討では有意差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究内容のうち、「1.ベバシズマブ以外の血管新生阻害作用を有する分子標的薬(ソラフェニブ)を除鉄状態で併用し、同様の除鉄誘導効果が得られる事を実証する研究」ではin vitroで期待された結果を得る事ができ、in vivoでの検討に順調に移行した。「2.体内鉄の血管新生阻害薬に対するバイオマーカーとしての有用性について検証を行うために結腸・直腸癌に対して前向きの観察研究を行う研究」は予定通り症例の集積を行うことはできたが、そのペースはやや期待より遅れている。「3.肝臓癌を対象にソラフェニブに除鉄を併用した前向き臨床研究の開始準備を行う研究」は、後ろ向きの検討で体内鉄が低値群の予後が良かったために、ソラフェニブと除鉄剤を併用する治療法の効果に期待が持て、倫理委員会にもプロトコールを申請できた。計画はやや前倒しで推進できている。以上より、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
「1.ベバシズマブ以外の血管新生阻害作用を有する分子標的薬(ソラフェニブ)を除鉄状態で併用し、同様の除鉄誘導効果が得られる事を実証する研究」ではin vivoでマウスに皮下腫瘍を作成し、ソラフェニブと鉄キレート剤:デフェラシロックスを併用する実験を行う予定である。 「2.体内鉄の血管新生阻害薬に対するバイオマーカーとしての有用性について検証を行うために結腸・直腸癌に対して前向きの観察研究を行う研究」では鋭意、症例の集積を進め解析を開始する予定である。 「3.肝臓癌を対象にソラフェニブに除鉄を併用した前向き臨床研究の開始準備を行う研究」は、倫理委員会に申請したプロトコールが承認されれば、臨床研究を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が見込みよりも少なかったために余剰ととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に消耗品費として有効に活用したい。
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