研究課題/領域番号 |
26861053
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
栗原 俊明 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30626700)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳癌 / 手術 / 拡張現実 |
研究実績の概要 |
拡張現実(Augmented Realty : AR)とは、周囲を取り巻く現実環境に情報を付加・強調させ、文字通り人間から見た現実世界を拡張する技術である。我々はこの技術を応用し、乳房温存手術において必要にして十分、かつ最低限の切除範囲を手術中に正確に認識可能なナビゲーションサージャリーを実現するため、研究を行ってきた。インフォームドコンセントおよび同意書の取得を行い、これまでに2名の乳癌患者より患者体表面形状データおよび仰臥位MRI画像を取得した。さらに、MRI撮影後に4カ所のオイルパッチを貼付したまま、ただちに仰臥位にてMRI撮影と同様の体位で3Dスキャナーを用いて、患者体表面データを取得し、3D画像構築を行った。その後、この取得した3D表面データを基にして、オイルパッチマーカーを含む乳房の模型(ファントム)を3Dプリンタを用いて作成した。すなわち、患者体表面と完全に一致した形状を持つファントムを取得し、これを用いて我々はレーザー光線により、実際の患者乳房の任意の場所・角度で切ったスライスのMRI画像を、遅延なくリアルタイムでタブレット端末に表示可能な「Virtual Slicer」を開発した。今後はこの器機を実際の患者体表に用いて、既存の検査手技との比較による精度の検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々はすでに前年度中にVirtual Slicerを開発しし、簡便で実用性が高い乳房温存術におけるナビゲーションサージャリーシステムの具体例として、臨床研究の準備に入っている。Virtual Slicerの概要は、iPadなどのタブレット端末から、マーカーとなる一筋のレーザー光を発生させ、文字通りそのレーザー光で患者の乳房を「切った切断面」のMRI画像をタブレット端末に表示させる装置である。360度自在にレーザー光で「切る」ことが可能であり、リアルタイムに遅延なく正確な位置のMRI画像を表示し続けることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
Virtual slicer上で作動する、患者体表と、タブレット上のMRI画像の位置関係をさらに感覚的に把握しやすくするため、被検者の体表を指し示すと、タブレット上でその位置を正確に表示する「マーキングペン」の実装を今後行っていく。技術的には実現可能であり、既に開発に着手しているが、まずはファントムにおいてその動作と精度を確認し、次に示す患者体表への適用が可能か否かを検証する。
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