これまでに我々は癌細胞におけるリン酸化酵素DYRK2の働きについて研究を進めてきた。DYRK2は乳癌・卵巣癌において発現が減少しており、低発現の癌では抗癌剤耐性を獲得し予後不良である。そのような乳癌に対して特異的に作用する治療の探索を現在行っている。DYRK2を恒常的にノックダウンした細胞株においてmTOR pathwayが活性化していることが、マイクロアレイを用いた解析により明らかとなった。mTOR阻害剤であるエベロリムスを添加するとDYRK2低発現の乳癌細胞ではコントロールと比較し感受性が増加した。Xenograft modelにおける検討では、DYRK2ノックダウン細胞は細胞障害性抗癌剤よりもエベロリムスでの腫瘍増殖抑制効果が高かった。これらの結果より、DYRK2の発現が低い乳癌ではエベロリムスが特異的に作用することが示唆された。
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