研究実績の概要 |
肝臓X受容体(Liver X Receptor、LXR)の作動薬であるLXR activatorはアテローム性動脈硬化症等の薬剤であるが, その副作用で脂肪肝をきたすことが知られている. われわれはLXRに着目し, 今年度は新たなNASHモデル動物の作成を試みた. 新規NASHモデル作成方法は, High Fat食を給餌したC57BL/6N 雄 miceにCCl4およびLXR activatorを腹腔内投与することで作成した. 実験群をCCl4単独群(control群), CCl4+溶媒群(溶媒群), CCl4+ LXR activator群(NASH群)の3群に分け, 比較検討した(各n=3). 体重増加率はcontrol群:溶媒群:NASH群=31.3%:20.5%:22.6%と全群で増加していた. 肝体重比は4.4±0.7:4.4±1.0:7.0±1.0とNASH群で有意に上昇していた. 生化学検査ではAST/ALT/T-cho/TG/Gluともに3群間で有意差は認めなかった. 組織学的評価ではHE染色およびMasson trichrome染色, Sirius red染色, Oil red染色を施行し, 各群において炎症細胞浸潤および繊維化を認めたが, NASH群においてより強い脂肪化・肝細胞風船化・マロリー小体を認めた. Real time PCRではNASH群においてSREBP-1cの上昇が見られ, さらにfasの上昇およびApoB100の低下を有意に認めた.新規NASHモデルはこれまでの飢餓モデルとは違い体重減少を認めず, また肝体重比の有意な上昇も認めており, よりヒトNASHに近い有効なモデルであると考えられた. また, 脂肪合成能の上昇および脂質輸送能の低下から著明な脂肪肝を認め, 組織学的に繊維化および炎症細胞浸潤, さらにマロリー小体を認めておりNASHの病態を反映したモデルであると考えられた. 再現性も認めており, 今後NASHに対する治療法の確立のため, 更なる研究を継続する.
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