本研究では、プラチナ系抗癌剤であるDACHPtと、T1強調MRI造影剤であるGd-DTPAの両方を内包したDACHPt/Gd-DTPA内包高分子ミセルを作成し、N1-H1 hepatoma cellをラットの肝臓に移植して作成した肝癌モデルにおいて、肝動脈より当該ミセルを注入し、MRI造影効果と抗腫瘍効果の両方を確認することができた。 当該ミセルは高分子ミセルとして約33nmのサイズであり、Enhanced permeability and retention効果(EPR効果)により血管透過性の亢進した腫瘍組織内部の血管から腫瘍内に選択的に送達でき、長い血中滞留性を有し、またミセル崩壊が徐々に進むことから、内包する薬剤の徐放性を併せ持つことを確認した。さらに、MRI造影力の指標である緩和能はGd-DTPA(3.4mM-1S-1)に比べ20倍以上(80.7mM-1S-1)を示した。これは、ミセル内部でGd-DTPAがポリマーの疎水基と結合することで固定化されるためにこのような効果が現れると考えた。 このミセルをHCC移植ラットモデルに投与したところ、oxaliplatin投与群、生理食塩水投与群に比べて有意に生存期間が延長した。MRI造影効果も、同濃度のGd-DTPA投与群に比べ、腫瘍の造影効果は有意に高く、かつ3時間以上持続した。 このように抗腫瘍効果とMRI造影効果を同時に併せ持つ高分子ミセルをHCC移植モデルで効果確認できた報告は他に例をみない結果となった。
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