研究実績の概要 |
リプログラミング技術は、再生医療の他、獲得した薬剤耐性を解除する側面をもつと考えられている。教室では2006年にYamanakaらが報告した4つの転写因子を癌細胞に導入し悪性度が低下することを報告した。しかし、この手法は転写因子に癌遺伝子であるc-Mycを含む問題や技術的な閾値が高い問題があるため、解決方法としてmiRNAに着目しES細胞とiPS細胞のmiRNAの発現の網羅的解析を通じ、共通に発現するmiRNAを導入することで体細胞のリプログラミングを開発した(Miyoshi N, et al. Cell Stem Cell 2011)。 先行研究においてmiR-302を肝癌細胞株に導入することでリプログラミングに成功した。リプログラミングのメカニズムとしては、エピジェネティックな変化による細胞の初期化が考えられており、体細胞リプログラミングに用いたmiRNAのうち上述の研究成果からmiR-302に着目し、miR-302の複数の標的遺伝子のうちエピジェネティック関連分子であるLSD1/2、MECP1/2に着目した。LSDはヒストンの脱メチル化により転写を抑制することが報告されている(Shi Y, et al. Cell 2004)。また、LSD1がc-Myc発現のトリガーとなることが報告されている(Aments S, et al. Oncogene 2010)。 本年度の研究実績の概要として、癌細胞のリプログラミングによる性質の変化をもたらすメカニズムの解明を目的とした実験系として、miR-302の導入により初期化をおこなった肝癌細胞株のsphereにおいてエピジェネティック関連分子であるLSD1の発現を細胞免疫組織化学染色、qRT-PCRで検討し、LSD2の発現が低下していることを確認した。
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