研究課題
肝類洞を構成する肝星細胞の活性化は、肝硬変・門脈圧亢進症などの病態の主因を成している。われわれは、肝星細胞の活性化はRhoキナーゼ阻害剤で抑制できることを報告してきた。このようにRhoキナーゼ阻害剤は、活性化肝星細胞が関与する疾患に大きな効果が期待されてきたが、一方で全身循環に与える副作用から、臨床応用が進まなかった。今回われわれは、ビタミンA付加リポソーム体によりRhoキナーゼ阻害剤を内包化した新たなDrug Delivery Systemを開発することに成功した。同薬剤は、臓器・細胞特異的に肝星細胞に取り込まれて薬効を発揮することを示した。その結果、その選択性によって、ROCK阻害剤単独の場合と比較し、わずか1/100量で同等以上の効果を示すことが分かった。また、その臓器特異性によって全身循環に与える影響も有意に軽減することが示された。肝虚血再灌流障害では、血液検査・病理組織学上において肝障害の程度を軽減し、また、肝虚血再灌流障害後の生存率も有意に改善した。また、その際、肝への臓器血流を改善することも示し、同時に門脈灌流圧も低減することができた。続いて、四塩化炭素を用いたラット肝線維化モデルへの同薬剤の投与では、組織学上有意に肝線維化の抑制が確認でき、また、肝線維化による生存率の低下も有意に改善した。同薬剤は、臨床応用の可能性も高く、今後の肝疾患の治療に大きなインパクトがあると考える。
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Liver Transpl
巻: 21 ページ: 123
10.1002/lt.24020