研究実績の概要 |
膵幹細胞からの膵腺房細胞の分化・増殖、また得られた膵腺房細胞を膵切除モデル実験ラットに移植することによる、膵外分泌機能の改善効果について、検討した。まず、タモキシフェン誘導性CreloxP系を用いて、Sox9発現細胞の解析を行った。膵については、Sox9は膵管細胞や膵腺房中心細胞に発現しており、そこから腺房細胞が供給されており、膵の幹細胞を選択的に収集しておく方法として、検討していくことが可能となった。 膵島移植における膵島の分離には、コラゲナーゼによる処理や遠心分離などが用いられるが、膵の幹細胞の分離においても同様の手法を用いて、LacZ標識された膵幹細胞を選択的に収集できる方法を検討した。ES細胞から膵外分泌細胞への分化誘導に関する研究では、膵幹細胞においてPDX-1が発現し、膵外分泌細胞への分化に関してFGF7,glucagon-like-peptide-1(GLP-1)、nicotinamideなどが関連していると報告されているが、我々は成熟した膵組織にPDX-1発現があるかどうか、また、FGF7,GLP-1,nicotinamideを投与することで、成熟した膵組織において、腺房細胞が増殖するかどうか検討したが、PDX-1の発現は認めたものの、腺房細胞の増殖は得られなかった。 膵幹細胞からの分化誘導に関する研究では、得られた細胞に対し、膵腺房細胞のマーカーとして、トリプシンとアミラーゼの免疫組織学的染色を行った結果、トリプシンとアミラーゼの発現を認めた。しかし、成熟した膵組織において、腺房細胞の増殖を誘導する方法の確立ができなかったため、今後の課題となった。 臨床面においては、膵外分泌機能不全を評価する方法として、13Cラベル脂肪負荷呼気試験を用いて、膵切除後の残膵のボリュームと膵外分泌機能が相関することを確認した。これにより、13Cラベル脂肪負荷呼気試験を用いた膵外分泌機能の評価の正当性が確認された。
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