研究実績の概要 |
肝再生におけるapelin-APJ系の動態をマウス70%肝切除モデルの再生肝を用いて検討した。APJの局在の検討では免疫組織化学染色により、類洞内細胞(クッパ-細胞)及び肝細胞壁に発現していることが示され、肝切除後にAPJ mRNA量に経時的な推移があることを示された。また、apelin-APJ系競合阻害ペプチドであるF13Aを投与し、肝再生への影響を検討した。F13A投与群(n=6)では肝切除後肝再生の亢進、肝切除後肝傷害の抑制、肝細胞増殖活性の亢進、肝再生因子(IL-6, TNF-α)の血清中および肝組織中の上昇を認め、F13Aの肝再生亢進作用が示唆された。さらに細胞内シグナルの検討では、F13A投与群ではSTAT3経路、MAPK経路の亢進を認めたが、PI3K/Akt経路の亢進は認めなかった。肝切除後の肝組織中のアポトーシスの検討(カスパーゼ3, 8, 9)では両群に有意な差は認めず、F13Aによってアポトーシスの亢進が得られないこと、また肝切除後炎症反応の検討(フィブリノーゲン、血清アミロイドA1)においては炎症が亢進されないことが示された。肝構成細胞に対するF13Aの直接的影響の検討では、マウスより単離した初代肝細胞、クッパ-細胞、肝星細胞株(LX-2)を用いて検討した。F13A刺激による初代肝細胞および肝星細胞株への直接的影響は認めなかったが、クッパ-細胞においてはF13A刺激によりTNF-αおよびIL-6の産生亢進を認めた。F13A投与により肝再生中のクッパ-細胞の活性化の亢進を認め、TNF-α、IL-6の産生亢進、STAT3経路、MAPK経路の亢進、肝細胞増殖の亢進、肝産生の亢進という現象が示され、F13Aの肝細胞促進治療薬としての可能性が示唆された。
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