研究課題
膵星細胞による癌間質形成が膵癌に及ぼす影響を検討し、その癌間質を正常間質に改変することを目指す。間質の正常化に着目して、これを制御する薬剤を同定し、さらには人工ウイルスに既存の抗癌剤や抗線維化薬を内包させることで、癌間質がもたらす膵癌治療抵抗性を克服し、新たな膵癌治療戦略を開発することを目的とする。本年度は、膵星細胞による癌間質形成の機序を検討するにあたり、ヒト膵癌切除組織より樹立した膵星細胞を用いて、三次元細胞外マトリックスを作成した。三次元細胞外マトリックスは、フィブロネクチンやⅠ型コラーゲンを豊富に有していた。また、低酸素下で膵星細胞が作成した細胞外マトリックスは、正常酸素下と比較して平行な線維の割合が増加した。さらに、低酸素下で膵星細胞が作成した細胞外マトリックス上では、正常酸素下と比較して癌細胞の運動距離が増加しており、この現象にコラーゲン産生に関わるPLOD2という蛋白質が関与していることを合わせて、原著論文で発表した。また、コラーゲンゲルを用いて、膵癌細胞と膵星細胞の三次元共培養モデルを作成し、膵癌細胞の浸潤・増殖能が、膵星細胞との共培養によって亢進することを見出した。また、浸潤様式を蛍光顕微鏡・共焦点顕微鏡・免疫染色法によって観察すると、膵癌細胞の浸潤に先立って、膵星細胞の浸潤がみられた。膵星細胞の浸潤に伴い、有意にコラーゲン層の厚みが増し、コラーゲン線維方向が細胞の浸潤方向と平行に変化した。膵星細胞は、細胞外基質のリモデリングを行い、コラーゲン線維の配列を変化させることで癌の浸潤を増殖している可能性が示唆され、学会で発表した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
Mol Carcinog
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002/mc.22409
Cancer Lett
巻: 372 ページ: 210-218
10.1016/j.canlet.2016.01.016
Int J Oncol
巻: 48 ページ: 1499-1508
10.3892/ijo.2016.3374
胆と膵
巻: 36 ページ: 1181-1187
