研究課題
目的:生体肝移植でドナーが老年の場合、移植された肝臓が再生しにくく生着率が悪いことが知られている。しかし、未だに画期的な改善方法が確立していない。そこで本研究では、肝臓の老化を支配する抗老化遺伝子群に着目し、生体肝移植の際に生じる虚血再灌流障害と肝再生不全に対し、それら抗老化遺伝子群の発現制御がどのような効果をもたらすのかを明らかにする。方法と結果:まず当科で施行した生体肝移植216例中、50歳以上ドナー(高齢ドナー)からの肝移植は49例施行した。その成績は、1/3/5年生存率 73.1/59.3/50.5%であり、それ以外のドナー(49歳以下)と比較して、有意に低値であった。その原因を検索すべく、ドナー肝ゼロ生検を用いて、肝内マクロファージ(CD68陽性細胞)を測定した。若年ドナー(20歳代)と比べると、高齢ドナー(50歳以上)では、CD68陽性細胞は有意に数が少なかった。高齢ドナーを使用した肝移植では、CD68陽性細胞12未満の症例で、有意に12以上の群よりグラフト生存率が低下していた。また、有意に感染症発症を多く認めた。多変量解析では、グラフト不全に関わる因子は、ドナー肝内CD68陽性細胞12未満であった。考察:高齢ドナーからの肝グラフトでは、肝内マクロファージが低下している。その中でも、特に低下しているグラフトでは、肝移植後の感染症も多く、グラフト不全を有意に引き起こしていた。今後、高齢ラットでの虚血再灌流障害に老化遺伝子がどのように関わっているか、検討する。
2: おおむね順調に進展している
飼育を続けている高齢ラットの実験を今年度から開始する見通しである。
今後、若年ラットと高齢ラットにおいて、虚血再灌流障害の程度を比較、老化遺伝子の関わりを明らかにすることを予定している。また、抗老化(抗酸化)物質であるレスベラトロールを投与し、虚血再灌流障害の改善が可能か、検討を行う予定である。
予定より、薬品や消耗品が安価であったため。
研究がさらに進展するよう、効率良く、主に消耗品へ使用予定である。また、研究結果を国内外の関連学会で発表する際の旅費や論文化する際の経費に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)
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