肝内胆管癌はリンパ節転移や遠隔転移を引き起こしやすく、抗がん剤への治療抵抗性も高い予後不良な消化器癌である。さらなる癌進展の機序解明ひいては新規治療戦略のこうちくが 必要である。TGF-βシグナルは正常上皮細胞や血管内皮細胞に対して増殖抑制作用を有する一方、癌細胞に対してはEMTを誘導し、癌の浸潤・転移に関与することが知られている。TGF-β-Smadシグナルを介した肝内胆管癌の浸潤・転移機序解明を目的とする本研究に関して1)TGF-βは癌細胞に対して強力なEMT誘導因子である。2)TGF-βは生体内で不活性型として合成され細胞外マトリックスに貯蔵される。3)局所のTGF-βシグナルは不活性型を活性型へ変換する活性化機構によりコントロールされる。といったTGF-βの特徴を元に、TGF-β-Smadシグナルを介した肝内胆管癌の浸潤・転移機序解明を目的とする本研究では、これまでの実験結果に基づいて局所のTGF-β活性化機序を介したTGF-β-Smadシグナルを抑制することで肝内胆管癌の進展が抑制されるという仮説を立てた。本研究提案の最終目的はTGF-β活性化機構に着目して肝内胆管癌進展におけるTGF-β-Smadシグナルのメカニズムを分子生物学的に紐解くことにより、新しい肝内胆管癌治療法の基礎を築くことである。
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