研究課題/領域番号 |
26861090
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
馬場 研二 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 医員 (30642615)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 光力学的診断 / 腹腔鏡手術 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
腹腔鏡下大腸切除術は定型化され、手術手技は標準化されている。しかし、触覚のない腹腔鏡用鉗子では、内腔に存在する腫瘍を確認する方法は漿膜側から確認するか、または術前に点墨したマーキングによって同定する以外の方法がない。そこで、我々は腸管内腔に存在する腫瘍を蛍光発色することで同定する方法として、本研究を開始した。しかし、腫瘍を直接蛍光発色する方法は容易ではなく、まずはOlympas社の腹腔鏡用蛍光内視鏡で発色するICGを腫瘍近傍に穿刺することで、術中の蛍光navigationを開始した。本方法は、点墨とほぼ同等の同定が可能であることがわかり、術前のマーキング法として点墨の変わりうる方法であると思われた。さらに、腫瘍近傍を蛍光内視鏡で確認すると、腫瘍近傍からICGがリンパ管を通って流れ、一部にはリンパ節へ集積する像が得られた。当教室では以前より乳癌だけでなく、胃癌に対してもセンチネルリンパ節理論の研究を進めており、本方法は大腸癌のリンパ節理論へ展開しうる方法ではないかと考えた。ただ、症例によっては、全くリン節管が蛍光発色しない症例もあり、注入方法の問題点(ICGを打ち込むタイミングや投与量)を考え、腫瘍近傍の漿膜側からICGを術中に打ち込みリンパ節の同定を試みている。現在症例を蓄積中である。 一方で、腫瘍を直接同定する方法として、5-アミノレブリン酸(以下5ALA)を用いての研究は、現在IRB申請の準備中である。他施設においては、大腸癌患者への5ALA投与の安全性は証明されており、当施設でも早急に研究を開始する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大腸の腹腔鏡手術において、腫瘍近傍にICGを打ち込む方法は、術前マーキング法として点墨に変わり得る腫瘍同定の一つとして有効であり、術中蛍光Navigation手術として利用している。またそれに派生し、リンパ管やリンパ節の同定し得る症例があることがわかり、当教室で以前よりすすめているセンチネルリンパ節理論を応用できないかと考えている。また、センチネルリンパ節同定には、術前の腫瘍近傍への打ち込みより、術中の漿膜側からのICG注入がより同定率が上がることを期待し、現在症例を蓄積中である。 5ALAの大腸癌患者への投与は未施行であるが、他施設より大腸癌患者へ投与し、有害事象なく尿中へ排泄されたという報告があり、本施設においてIRB通過を待って投与開始する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
ICGの術前注入、術中注入は比較的簡便な方法で、センチネルリンパ節理論を応用すれば、テーラーメイド治療へつながる可能性を秘めている。特に、直腸癌の側方リンパ節郭清に関しては本方法を応用した治療戦略を組み立てられれば、有効な手段と考える。 一方で、腫瘍そのものを蛍光発色する技術は未だ持ち得ておらず、本研究テーマである腫瘍の蛍光内視鏡により同定するべく、腫瘍に集積する蛍光物質(5ALAやその他)の同定を急ぎたい。まずは5ALAのIRB通過を待って直ちに開始したいと考えている。
|