研究課題
本研究最終年である本年は、この2年間で施行してきた、主にICGを用い蛍光腹腔鏡を使用した腹腔鏡下大腸癌手術をより安全にかつ有効に行うことを大きな目標とした。当初予定した5アミノレブリン酸の使用は、保険適応外の薬剤ということで、患者への使用が困難であったため、日常診療で使用可能なICGを利用することにした。ICGを術前に腫瘍近傍に打ち込むことで術中に腫瘍を同定する方法は確立可能であったが、本方法はこれまで墨汁を使って腫瘍の局在を同定していた方法と術前の手技上の手間は変わりはなかった。しかし、ICGは周囲のリンパ流やセンチネルリンパ節を同定することができ、特に早期大腸癌に対する術前ICG注入は有効であった。本方法を用いることで、早期大腸癌に対する縮小手術の可能性が示唆され、それらを学会にて報告した。また、ICGの静注が腸間の血流評価に用いることが可能であり、新たな腹腔鏡システムを導入することなく、大腸癌手術における吻合腸管を血流を評価することで、血流不全に伴う縫合不全の予防となると考えられた。この血流評価は小腸切除時にも応用可能であり、小腸切除の際のICG静注による血流評価は論文報告した。ICGの腫瘍近傍への直接注入や血流評価のためのICG静注は有害事象はなく、すべて安全に施行可能であった。本方法はこれまで定型化してきた大腸癌手術の更なる安全性と根治性を目指すうえで非常に有効であり、論文・学会での発表を通し報告した。ただ、ICGという既存の薬剤での使用であり、腫瘍そのものの蛍光発現でないということからも、5アミノレブリン酸を含めた腫瘍特異的に発現する物質の開発が必要と考える。本手技を更に確立し、定型化するとともに、更なる研究が必要と思われる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Surg Today
巻: 47 ページ: 643-946
外科
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