研究実績の概要 |
隣接した細胞を接着するgap junction は細胞間情報伝達に関与している。臨床的には先天性難聴や概日リズムの形成との関連が指摘されていたが、近年癌との関連も示唆されるようになった。gap junctionは細胞膜4 回貫通型タンパク質であるコネキシンから形成される。コネキシンは21種類 以上あるが、癌腫によって異なる作用が報告されている。 本研究ではまず食道癌においてコネキシン43の発現と臨床病理学的因子を比較検討した。当科で切除された98例の食道扁平上皮癌組織をコネキシン43に対する抗体を使用し、免疫染色を行った。コネキシン蛋白の発現と臨床病理学的因子の検討を行った。コネキシン43遺伝子陽性群と陰性群を比べると陽性群は有意に生存率が低かった。単変量解析では腫瘍壁深達度、リンパ節転移、リンパ管浸潤、静脈浸潤と共にコネキシン43蛋白陽性が予後因子として認められた。コネキシン43遺伝子は食道癌の進展に関わっている可能性があり、これの抑制による腫瘍増殖抑制や生命予後改善が期待できる可能性があることがわかった。この成果は第69回日本食道学会集会にて発表し、さらに検討を加えてMOLECULAR AND CLINICAL ONCOLOGY, 4,2016 989-993,に発表した。次に食道癌細胞株におけるコネキシン43の発現を定量的RT-PCRを行った。食道癌細胞株KYSEシリーズで行ったが、何度も実験を行ったがPCRでの定量が困難であった。食道癌においてはコネキシン43タンパクが腫瘍増殖に関連していることがわかったが、遺伝子レベルでの発現やその抑制による癌抑制効果までは確認することができなかった。
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