腫瘍におけるRing box protein-1 (RBX1)の役割および治療標的としての意義を検討した。術前未治療胃癌145例の切除標本を用いて免疫組織染色を行い、RBX1発現レベルと臨床病理学的因子、予後との関連を検討した。RBX1発現レベルは壁深達度、遠隔転移、静脈侵襲と有意に関連していた。RBX1高発現例は低発現例と比較し、生存期間は有意に短く、多変量解析ではRBX1発現レベルは独立予後規定因子であった。また、RBX1陽性率はKi67陽性率と有意な正の相関を示した。以上のことから、RBX1はヒト胃癌の増殖、浸潤、転移に関連し臨床的意義を有することが判明した。続いて、ヒト胃癌細胞株のRBX1発現をsiRNAでノックダウンし、増殖能、転移能、薬剤治療抵抗性について検討した。RBX1ノックダウン細胞はコントロールと比較して細胞増殖が有意に抑制された。RBX-1ノックダウンによって、p21の蓄積が生じ、腫瘍細胞の細胞周期停止が誘導された。また、RBX1ノックダウンにより、細胞遊走能が有意に低下した。さらには、RBX1ノックダウンにより5-FUに対する感受性が改善された。以上の結果から、RBX1は腫瘍の増殖、転移、抗癌剤治療抵抗性に関与し、新たな治療標的となる可能性が示唆された。
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