本研究の目的は(1)膵癌患者の臨床検体を用いてメモリーT細胞のマーカーであるCD45ROの免疫染色を行い,化学療法や放射線療法など術前治療によるメモリーT細胞の誘導の有無を検討すること,(2)PD-1経路を中心としたT細胞不活化経路の阻害による術前免疫療法が,腫瘍特異的なメモリーT細胞の誘導を促進させることを動物腫瘍モデルで検討すること,(3)上記のモデルを用いて,術前免疫療法と術前化学療法,放射線療法との併用により,腫瘍特異的なメモリーT細胞を相乗的に誘導することを検討し,また腫瘍切除後の腫瘍再接種による生着,あるいは肝転移を相乗的に抑制することを明らかにすること.(4)上記にて誘導されたメモリーT細胞を同型担癌免疫不全マウスに用紙移入し,抗腫瘍効果および再発・転移抑制効果を検証すること,である. 膵癌根治切除術を施行した症例の切除検体を用いて,免疫染色を施行し術前治療の有無によるCD45RO陽性メモリーT細胞を始めとしたCD4陽性Tリンパ球,CD8陽性Tリンパ球,FOXP3陽性Tリンパ球(Treg)など,各リンパ球の浸潤を検討し,それをもとに術前治療の有無による違いを検討した.当初は想定された傾向が表れていたが,研究を進めるにつれて術前治療と腫瘍浸潤リンパ球との間に差が見られなくなり,今後の方向性を検討している.
|