研究課題/領域番号 |
26861095
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
宮澤 基樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (90549734)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ユビキチン / プロテアソーム / 樹状細胞ワクチン |
研究実績の概要 |
本研究ではユビキチン(Ub)と腫瘍関連抗原の融合遺伝子を作成し,その腫瘍抗原提示能力を最大限に発揮させるため,樹状細胞(DC)成熟化に伴うプロテアソームの形態変化の観点から,DC成熟化に伴う「構成型」→「免疫型」へのプロテアソーム形態変化を阻害し,構成型プロテアソームを発現する成熟DCを誘導することで,プロテアソームの形態変化による成熟DCと腫瘍細胞の両者でのペプチド-HLA Class I複合体の不一致を解消することで,これまで研究を進めてきたUb-TAA融合遺伝子導入DCによる効率的な抗腫瘍免疫を誘導することを目的とする。本年度はまずユビキチン遺伝子のクローニングを行った。5’primer(5’ AGT CCG CTA GCC GCC ACC ATG CAG ATC TTC GTG AAG ACC 3’),3’primer (5’ TAG TCC GTC GAC GTA TTT AAA TCG ACC CCC CCT CAA GCG CAG GAC 3’)とし,PCRを行い,電気泳動後,228bpのmonoUbiquitinをgel extractionで抽出し、TAクローニングを行った。Ub遺伝子をアデノウイルスコスミドベクターにligationし,次にあらかじめプライマー内に設けておいたSwaⅠサイトに膵癌腫瘍関連抗原であるmesothelin遺伝子をligationし,Ub-mesohtelin融合遺伝子発現アデノウイルスベクターを作製した。作成した融合遺伝子導入DCにおけるの発現の変化についてフローサイトメトリーにて検討したところ,mesothelin遺伝子単独に比較して、融合遺伝子ではmesothelinの発現が低下し、感染後24時間後にくらべて48時間後でより顕著にその傾向が見られたことから、細胞内でのmesothelin蛋白の分解が亢進していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではユビキチン(Ub)と腫瘍関連抗原の融合遺伝子を作成し,その腫瘍抗原提示能力を最大限に発揮させるため,樹状細胞(DC)成熟化に伴うプロテアソームの形態変化の観点から,DC成熟化に伴う「構成型」→「免疫型」へのプロテアソーム形態変化を阻害し,構成型プロテアソームを発現する成熟DCを誘導することで,プロテアソームの形態変化による成熟DCと腫瘍細胞の両者でのペプチド-HLA Class I複合体の不一致を解消することで,これまで研究を進めてきたUb-TAA融合遺伝子導入DCによる効率的な抗腫瘍免疫を誘導することを目的とする。本年度はユビキチン遺伝子のクローニングを行い, 膵癌の腫瘍抗原関連遺伝子であるmesothelin遺伝子との融合遺伝子の作成にも成功し,DCにおける融合遺伝子の蛋白発現の特徴もつかめたことから,次年度以降のプロテアソームの形態変化の違いによるDCワクチンの抗腫瘍効果の増強について研究していくにあたって,おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Ub-プロテアソーム経路によるmesothelinのペプチドへの分解亢進及び構成型プロテアソーム発現成熟DCによる'適切'な抗原提示を実現することで,DCワクチンにおける最も効率的な抗腫瘍免疫の誘導方法を開発するため,今後の研究において明らかにする点は,次の仮説1及び仮説2である。 (仮説1) DCの成熟化に伴う構成型から免疫型へのプロテアソームの形態変化をsiRNAを用いて阻害し,成熟DCにおいても腫瘍細胞と同じ構成型プロテアソームを発現させることで,成熟DCと腫瘍細胞で提示されるTAA由来ペプチドの不一致を解消できる。 (仮説2) 免疫型プロテアソームへの形態変化を阻害した成熟DCにUb-MSLN融合遺伝子を導入することで,MSLN単独の遺伝子導入DCを用いた場合と比較してより効率的にCTLが誘導可能であり,強い抗腫瘍免疫を発揮することができる。 仮説1を証明するため,構成型プロテアソームのサブユニットX(β5),Y(β1),Z(β2)がLMP7(β5i),LMP2(β1i),MECL-1(β2i)にそれぞれ入れ替わり,免疫プロテアソームが形成されるため,個々のサブユニットのsiRNAを作製し,免疫プロテアソームへの形態変化を阻害することを確認する。次に,siRNAにより免疫プロテアソームへの形態変化を阻害された成熟DCは構成型プロテアソームを利用してmesothelinをペプチド断片へ分解し,細胞表面に提示するため,構成型プロテアソームを有する腫瘍細胞株を傷害しうるCTLクローンによって認識される。一方,免疫プロテアソームを発現する通常の成熟DCは,ペプチドの不一致のため同CTLクローンに認識されないことを確認する。 仮説2は本手法を用いることによる特異的CTLの誘導効率と膵癌細胞株を標的とした細胞傷害活性を実際に評価することで立証する。
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