研究実績の概要 |
近年症例数が増加している膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)由来浸潤癌に対する新規治療標的分子として、膵癌でその有用性を報告してきたMUC16とmesothelinに着目し研究を行ってきた。当該年度は、IPMN切除症例223例(invasive IPMC68例、high-grade dysplasia74例、low-,intermed iate-grade dysplasia81例)を対象としたMUC16およびmesothelinの免疫染色を用いた蛋白解析を行ってきた。MUC16およびmrsothelinはhigh-grade dysplasiaやその前駆病変では発現を認めず、IPMN由来浸潤癌となって初めて蛋白発現することが分かった。 予後因子解析において、MUC16, mesothelin高発現は生命予後との相関を認めなかった。この理由としては、IPMN由来浸潤癌の予後は膵癌と比較すると良好であることが挙げられた。 in vitro研究として和歌山医大第二外科で切除した3症例のIPMN由来浸潤癌切除標本より組織片を採取し、酵素処理後に3次元培養を行った。得られた培養細胞をPCR、Western blotting法、免疫染色でそれぞれMUC16、mesothelin蛋白発現を解析したところ、いづれもMUC16、meshothelinを発現することが分かった。しかし、IPMN由来浸潤癌細胞株の入手あるいは作成は非常に困難で、当初予定していたMUC16/mesothelin機能解析を行うには至らなかった。
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