研究課題
癌間質におけるCarcinoma-associated fibroblast (CAF)が癌の増殖、血管新生、転移などに関与するいう報告がされているが、CAFと非腫瘍正常組織における線維芽細胞との違いや、CAFの癌の増殖や転移に関する分子生物学的なメカニズム、CAFの由来などに関してはほとんど不明である。本研究において、大腸癌培養細胞と線維芽細胞を用いた基礎的研究を行うことにより、CAFに関する癌の増殖、転移に関するメカニズムを明らかにすることにより、大腸癌の浸潤や転移を抑制する新たな治療の開発を目的とした。当科ではこれまでb2-integrin epitopeを認識するP4H9を発現する線維芽細胞と癌細胞のCEACAM1発現の関連について報告をしてきた。P4H9-detected molecule (PDM)の発現が線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化に関与することを明らかとした。本研究では大腸癌におけるPDMの発現と大腸癌患者の臨床病理学的因子の関連について検討した。2002年から2003年に和歌山県立医科大学第2外科で手術を施行した大腸癌患者156名の臨床検体を用いて免疫組織化学染色を施行し、線維芽細胞のPDM発現率と、大腸癌の転移率、生存率との関連について解析した。免疫組織化学染色にて、PDM発現群(54例)とPDM非発現群(102例)に分類した。単変量解析では線維芽細胞のPDM発現、分化度、深達度、リンパ管浸潤、静脈浸潤がリンパ節転移と有意な関連を認めた。多変量解析では線維芽細胞のPDM発現のみがリンパ節転移に関する因子であった(p=0.0066)。また、単変量解析でPDM発現線維芽細胞、深達度、リンパ管浸潤、静脈浸潤が血行性転移との関連を認めた。多変量解析では線維芽細胞のPDM発現のみが血行性転移との関連を認めた(p=0.0002)。また、線維芽細胞にPDMを発現するものは生存率も不良であった(P<0.0001)。以上より、PDMを発現する癌間質線維芽細胞は大腸癌の転移や生存期間に関与し、悪性度の指標となることが示された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
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