研究実績の概要 |
<臨床病理学的研究>慶應義塾大学病院一般・消化器外科にて保有する胃癌切除検体(病理診断の支障とならないように採取した2-3mm大の組織)を用いて、リンパ管マーカーであるD2-40を用いてLymphatic vessel density (LVD)の評価を行い、HOXB9陰性検体とHOXB9陽性検体で比較を試みた。抗体を用いて免疫染色を行うと、我々が保有している検体には主に粘膜が含まれており粘膜下層に多く発達するリンパ管の数をカウントすることは困難であった。HOXB9陽性が予後増悪因子であることは既に得られている結果である。我々はさらにCox proportional hazard modelを用いて全生存期間に関する予後解析を行った。HOXB9陽性・腫瘍深達度・リンパ節転移・pStage・リンパ管浸潤・静脈浸潤・組織型のうち、予後を増悪させる因子として有意であったのはpStage(Hazard Risk=10.04, p=0.028)、次いでHOXB9陽性(Hazard Risk=3.67, p=0.097)であった。この2つの因子に対し多変量解析を行ったが、いずれも有意な独立予後規定因子とはならなかった。 <In vitro>HOXB9発現調節胃癌細胞であるTMK-1/HOXB9、MKN-74/HOXB9を用いて、上皮間葉移行のマーカー(E Cadherin, N Cadherin, Vimentin, Snail, Slug, Twist)の発現亢進を評価した。TMK-1においてHOXB9発現によりSnailの発現は亢進したが、その他のマーカーには変化がなかった。MKN-74においてはマーカーの変化はなかった。MKN-74に対しScratch Assayを用いて細胞遊走能の変化の評価を行ったところ、HOXB9発現による遊走能の亢進が確認された。
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