研究実績の概要 |
HOXB9は大腸癌、乳癌といった悪性腫瘍の悪性度と相関すると我々は過去に報告した。さらにはHOXB9は血管新生を導き、転移・浸潤に至るということも我々は示した。今回はHOXB9と胃癌の悪性度の関係、さらにはリンパ管新生との関係を示すことを目的とした。まず当院で所有する胃癌切除検体69例を抗HOXB9抗体で免疫染色を行い、HOXB9陽性群と陰性群で臨床病理学的因子を比較した。HOXB9陽性群は、有意に病理学的腫瘍深達度が深く(p=0.012)、リンパ節転移が多く(p=0.007)、リンパ管浸潤が高度で(p=0.003)、静脈浸潤が高度(p=0.017)という結果が得られた。さらに、HOXB9陽性群では全生存期間が悪い傾向があった(p=0.076)。この結果を裏付けるべくin vitroの実験を行った。まず、当施設で所有する5つの胃癌細胞株(TMK-1, MKN-28, MKN-45, MKN-74, KATOⅢ)をqPCRにて比較し、TMK-1がHOXB9低発現株であることを特定した。TMK-1にウイルスベクターを用いてHOXB9高発現のtransfectant及びcontrolを作成した。PCR法にて血管新生マーカーであるVEGF-C, VEGF-D, VEGFR-3の発現比較を行った。HOXB9高発現株ではVEGF-D発現が亢進しているという結果が得られた。今回の研究で、HOXB9は胃癌においても悪性度と相関していることが示された。その機序として、リンパ管新生を亢進している可能性が示された。現在上記結果を英文雑誌に原著論文として投稿中である。
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