末梢血管用生体吸収性ステントに、血管新生促進作用が期待されるGranulocyte-colony stimulating factor (G-CSF)を混入させ、G-CSF溶出生体吸収性ステントを開発し、末梢動脈疾患に対する新たな治療方法を開発することを目的に研究を開始した。まずブタ腸骨動脈へのステント留置手技を確立したが、同予備実験において、ブタ動脈におけるステント留置部の強い内膜肥厚が示唆されたため、平成26年度途中から実験計画を修正し、金属ステントをコントロールとし、生体吸収性ステントのブタ動脈における開存性や血管壁反応の違いの検討を先行させた。ステント留置部の留置6週間後の病理組織学的検討では、新生内膜面積 (内弾性板内面積-血管内腔面積)は、生体吸収性ステント群において有意に縮小し、一方で中膜面積 (外弾性板内面積-内弾性板内面積)は、生体吸収性ステント群で有意に拡大していた。また狭窄率 (新生内膜面積/内弾性板内面積)は二群間で有意差を認めなかった。 本年度は病理組織学的検討として留置6週間後の血管壁炎症スコア、血管壁損傷スコアによる評価を追加した。炎症スコア、損傷スコアは、ともに生体吸収性ステント群と金属ステント群で有意差を認めなかった。これらの結果より、金属ステントと比較して、留置6週間後の狭窄率、血管壁炎症、損傷スコアに違いはないものの、異なった血管壁への反応を示していることが示された。またこの反応性の違いの重要性を勘案し、生体吸収性ステントの長期留置実験を追加した。ミニブタ3頭に対して生体吸収性ステント留置24週間後までの経時的な観察を行い、現在結果を解析中である。また血管壁反応の基礎データが得られたため、これをもとに薬剤溶出生体吸収性ステント作成に着手しつつある。またブタ下肢虚血モデルの作成実験を重ね、手術手技、虚血肢の血管撮影手技などを確立した。
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