初年度(昨年度)にヒト胸水、腫瘍からのリンパ球分離、フローサイトメトリーによるリンパ球の表面抗原解析を行う実験系の確立を行った。しかし、胸水中のリンパ球が少なく、十分な解析を行うことができなかった。今年度は、よりリンパ球を多く含むヒト肺癌腫瘍より腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)を分離し、表面抗原の解析を行った。 TILを分離した後、CD45、CD14、CD15、CD11bなどの表面抗原を染色し、フローサイトメトリーによって解析した。表面抗原の発現により、ミエロイド由来抑制細胞(MDSC)を単球系MDSCおよび顆粒球系MDSCのサブセットに分けて解析を行った。コントロールとして、正常肺からリンパ球を分離し、同様に解析を行った。 結果 第1例目の解析においては、正常肺では顆粒球の64.4%が顆粒球系MDSC、単球の53.8%が単球系MDSCであったが、癌部では腫瘍内浸潤顆粒球の51.2%が顆粒球系MDSC、腫瘍内浸潤単球の4.15%が単球系MDSCであった。癌部では浸潤単球における単球系MDSCの割合が低下していた。 第2例目の解析においては、癌部では腫瘍内浸潤顆粒球の21.0%が顆粒球系MDSC、腫瘍内浸潤単球の33.3%が単球系MDSCであった。
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