研究課題
本研究は悪性胸膜中皮腫の胸水中に含まれる免疫抑制細胞の一種であるミエロイド由来抑制細胞(Myeloid derived suppressor cell, MDSC)の動態を明らかにし、難治性疾患である悪性胸膜中皮腫に対する新たな複合免疫療法を確立するための基礎的検討を行うことを目的とする。平成29年度は研究計画に対して以下の結果を得た。1)悪性胸膜中皮腫疑い患者の胸水、腫瘍組織より単核球を分離し、表面抗原の解析を行った。MDSCはCD14、CD15、CD11b、HLA-DR抗体にて染色し、フローサイトメトリーによって解析した。その結果、胸水中には単球系MDSC(CD14+/CD15-/CD11b+/HLA-DR low)が単核球中の7-11%認められ、顆粒球系MDSC(CD14-/CD15+/CD11b+)が単核球中の10-17%に認められた。また、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞はそれぞれ単核球中の5.6-40.8%、7.7-11.3%に認められ、症例によって大きく異なることが判明した。2)Balb/cマウスにマウス悪性胸膜中皮腫細胞株AB12を接種し、14日後に犠牲死させ、胸腔内の観察を行った。臓側、壁側胸膜上に複数の腫瘍結節を認め、HE染色にて悪性胸膜中皮腫結節であることを確認した。また、マウス脾臓よりMDSCとCD8陽性T細胞の分離をMagnetic cell sorting(MACS)法を用いて行った。顆粒球系MDSC(CD11b+/Ly6G+/Ly6clow)、単球系MDSC(CD11b+/Ly6G-/Ly6chigh)、CD8陽性T細胞の純度はそれぞれ36.6%、4.22%、95.9%であり、MACS法でのMDSC分離方法の再検討を要する結果となった。3)悪性胸膜中皮腫患者のデータベースを後方視的に解析し、炎症マーカー、栄養指標などが予後因子となることを明らかにした。
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Annals of Surgical Oncology
巻: 25 ページ: 1555~1563
10.1245/s10434-018-6385-x