研究課題
NKT細胞上のPDL1に対する阻害抗体を用いて、NKT細胞によるサイトカイン産性能、抗腫瘍効果に関する研究を行ってきた。主に健常人で行ったin vitroでの解析結果をまとめ、学会発表と論文投稿を行うとともに、更に以下の項目に関して追加で解析を行った。1 ヒト由来のPDL1蛋白とCD1d、CD28刺激抗体を用いた系で、NKT細胞刺激時のIFNgやIL-4などのサイトカイン産生能の変化を検討した。PD-1やPDL1、PDL2、CD80に対する阻害抗体を用いることで、NKT細胞の機能が改善するメカニズムの解析を行った。2 PDL1阻害抗体を併用した際のNKT細胞による癌細胞株に対する抗腫瘍効果を昨年度は2例の健常人ドナーから得た検体で解析を行った。今年度はさらにドナー数を増やして、肺癌細胞株やK562細胞株を用いて同様の解析を行い、結果の再現性の確認をした。3 昨年度までは肺癌患者検体を用いて、NKT細胞上のPD-1の発現や増殖能の解析を行ってきた。がん患者ではPD-1以外の抑制性の分子が発現しており、PDL1の阻害だけでは機能が改善しない可能性があった。そのため、今年度は、患者由来の末梢血単核球を培養し、培養細胞中のNKT細胞を単離して実験を行った。aGalCerを提示した抗原提示細胞で刺激した際のサイトカイン産性能をPDL1抗体を併用した場合としなかった場合で比較検討し、解析を行った。健常人の検体を用いた系で得た本研究の結果が、がん患者の治療に応用可能か検討を行った。
3: やや遅れている
当初の計画では本年度は肺癌患者検体を用いて、PD-1/PDL1阻害時のNKT細胞の増殖能やサイトカイン産性能を検討する予定であった。患者検体から実験に充分な量のNKT細胞を単離することが困難だったにもかかわらず、2例において解析を行うことができた。in vivoの系での抗腫瘍効果の検討に関しては、マウスモデルの作成は行った。しかし、ヒト検体を用いた抗腫瘍効果の解析を行うにあたっては、十分量の細胞数を得ることが困難であり、in vitroの研究と並行して行うことができなかった。
NKT細胞の直接的な抗腫瘍効果に関して、これまで検討を行ってきたが、今後、間接的な抗腫瘍効果に関しても検討を行う。PD-1/PDL1阻害抗体を用いてNKT細胞を活性化した際に、NKT細胞が他の免疫細胞の殺細胞能に与える影響を解析する。今年度までに行った研究結果と合わせて論文に加えて、再投稿をする予定である。さらにGMP gradeの試薬を用いて、これまでと同様の実験を行うことで、臨床試験への応用の準備をすすめる。
今年度はこれまでの研究成果に関する論文作成と投稿を行った。その際、より詳細な検討を加える必要性が生じた。今年度後半はそのための準備と予備実験に時間を要した。次年度に継続して研究を行えるよう、一部の助成金を翌年度に繰り越した。
次年度は主に追加実験に用いる試薬に助成金を使用する予定である。さらに、論文を再投稿する際の英文校正、投稿料等に一部の助成金を使用する計画である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Cancer Science
巻: 107 ページ: 233-241
10.1111/cas.12882.