研究実績の概要 |
肺移植後の拒絶反応の結果生じる合併症であるbronchiolitis obliterans syndromeは、高い罹患率及び死亡率という観点から、予防法及び治療法の改善、開発が重要な課題となっている。Peroxisome proliferator-activated receptor-γ(PPARγ)に対するリガンドであり、抗炎症作用、抗酸化作用、抗線維化作用が報告されているチアゾリジン誘導体の一つであるPioglitazoneにより、移植後の拒絶反応を軽減することが可能であることを、マウス気管移植モデルで検討した。【方法】マウス同所気管移植モデルにおいて検討した。BALB/c またはC57BL/6をドナー、C57BL/6をレシピエントとした。実験群ではPioglitazoneを5mg / kg の量で術前2日より連日腹腔内投与した。移植後7日で犠牲死させ、グラフトの病理組織学検討,炎症性サイトカインの発現検索を行った。【結果】Pioglitazone投与群でグラフトの epithelial layer、subepithelial layer の肥厚が軽減され、気管内腔狭窄の抑制が認められた。Mature T cell (CD3陽性細胞)のグラフトへの浸潤は抑制しなかったが、Regulatory T cell (FoxP3陽性細胞)の集積を認めた。さらにreal time PCRで炎症性サイトカインの発現量低下を認めた。【結論】PPARγのリガンドであるPioglitazone投与により、マウス気管移植モデルにおいてグラフトの狭窄抑制、regulatory T cellの集積、炎症性サイトカインの発現量低下を認め、移植後の拒絶反応を抑制する可能性が示唆された。
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