研究課題
本研究では肺がん患者に対する免疫療法を開発するため、患者個々で異なる遺伝子変異に由来する抗原を認識したTILを使用することの有効性を調べることを目的とした。抗原ペプチド候補の中から実際にTILが認識しているペプチドを同定するには、自己のターゲット細胞にペプチドを提示させ、TILとの反応性を調べる必要があるが、患者一人に100種類以上ある遺伝子変異各々に対してペプチドを用意することは非常に困難である。そのため、ターゲット細胞にペプチドを提示させる方法として、変異部位を含む長鎖ペプチドをコードするmRNAをin vitro合成し、導入して発現させる方法を検討した。実験系構築のためのモデル抗原としてGlypican-3 (GPC3)を用い、CTLには我々が以前樹立したGPC3ペプチド特異的CTLクローンを使用した。GPC3全長のmRNA、およびGPC3由来長鎖ペプチドのmRNAともにターゲット細胞に導入することで、細胞内で発現しプロセスされ、ペプチドがHLA分子に結合して提示され、CTLクローンによって認識されることをIFN-γ ELISPOT解析で確認した。また、一過性の発現であることやタンパク発現と抗原提示の時間差を考慮しmRNA導入からCTLと反応させるまでの時間を検討すると、CTLの反応は大きく異なり、最適な時間の設定を行った。これらより次世代シーケンサー解析から選出した多数の遺伝子変異由来候補ペプチドの中からTILが認識する抗原ペプチドを効率良くハイスループットに同定するための実験系を確立した。現在、実際の肺がん患者切除検体を用いた解析も開始しており、今後、Patient-derived xenograft (PDX)の技術によるがん細胞株の樹立も試み、TILの自己がん細胞に対する傷害性を確認することで、肺がん患者でのTILを使用した個別化細胞移入療法の開発を目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件)
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