研究課題/領域番号 |
26861135
|
研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
木村 亨 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (90580796)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 間質性肺炎 / 肺線維症 / 急性増悪 / ナトリウム利尿ペプチド |
研究実績の概要 |
C型ナトリウム利尿ペプチド (CNP;C-type Natriuretic Peptide) を用いた、肺線維症・間質性肺炎及びその急性増悪に対する予防・治療を考案することを目的として、本研究を計画した。肺線維症・間質性肺炎及びその急性増悪の動物モデルを用いてCNPによる抗炎症・抗線維化効果とその機序を明らかとし、さらにヒト肺由来線維芽細胞に対するCNPの作用機序を解明することで、臨床応用を目指す。 ブレオマイシン (BLM) による肺線維症モデルマウスに対してCNPを持続皮下投与することでマウス肺の線維化が抑制された。CNPを投与したマウス肺では、炎症性サイトカインIL-1βやIL-6などの遺伝子発現が抑制された。以上より、CNPはマウス肺においてBLMによる炎症反応を抑制することで、肺の線維化を軽減することが明らかとなった。また、肺線維症・間質性肺炎の急性増悪に対する予防・治療を検討する動物モデルとして、BLMにより予め肺線維症を惹起したマウスに手術侵襲を仮想した炎症刺激を加えて、その生体反応を検討したところ、著明な炎症反応と有意な生存率の低下を認めた。同モデルは肺線維症・間質性肺炎の急性増悪の臨床像を模倣するものと考えた。 CNPの抗炎症・抗線維化作用は、肺線維症・間質性肺炎の急性増悪に対する予防・治療に繋がる可能性がある。今回新たに確立した急性増悪モデルを用いてCNPによる効果を検討すると共に、手術検体から得られるヒト肺由来細胞を用いたCNPの抗炎症効果のメカニズムの解明に向けて、さらに研究を推進したいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺線維症・間質性肺炎およびその急性増悪に対するCNP投与による効果とその機序を、動物モデルを用いて明らかにすることで、現在確立した治療法がない同疾患における臨床応用に繋がるものと考えられる。従って、達成目標として次の2点を挙げた。 #1. 肺線維症マウスモデルにおける、CNP投与の治療効果とその機序を明らかにすること #2. 肺線維症・間質性肺炎の急性増悪の臨床像を模倣する動物モデルを確立すること #1に関連して、BLM誘発肺線維症マウスにCNPを投与すると肺での炎症性サイトカイン・増殖因子の遺伝子発現を抑制し、線維化が軽減することを示した。CNPがBLM誘発肺線維症に対して抗炎症・抗線維化効果を有することが明らかとなった。本成果は平成27年呼吸器外科学会で報告し、続報を平成27年度世界肺癌学会で発表予定である。#2に関して、BLMで肺線維症を惹起したマウスに炎症刺激を加え、急性増悪の臨床像を模倣したモデルを作製した。本成果は平成26年度胸部外科学会で報告し、続報を平成27年度ヨーロッパ呼吸器外科学会で報告する。さらに、論文として英文雑誌に投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の実験結果から、BLM誘発肺線維症マウスにおいて、CNPが肺の炎症と線維化を抑制することが明らかとなった。また間質性肺炎・肺線維症の急性増悪の動物モデルを確立した。今後は、引き続き、CNPの肺線維症に対する治療効果のメカニズム解明を進めるとともに、急性増悪に対する治療効果についての検討へ進みたい。したがって、以下の推進方策を立てた。 #1. 急性増悪の動物モデルを用いて、CNP投与による予防・治療効果を検討する。 #2. 各種遺伝子改変マウスを用いて、生体内でのCNPの抗炎症・抗線維化効果の標的細胞を明らかにする。 #3. #2の結果で示唆されたCNPの標的細胞について、ヒト肺由来細胞を用いて、CNPによる抗炎症・抗線維化作用について、その細胞内メカニズムを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に実験動物および投与薬剤の購入が必要であったため、初年度交付額の使用を一部控えていたが、行う実験と購入が年度を跨いだため、次年度使用額となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
初年度末に予定し、年度を跨いだ実験に必要な実験動物、投与薬剤および抗体・試薬の購入のため、次年度前半に使用する予定である。
|