研究課題/領域番号 |
26861137
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
奈良岡 征都 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (10455751)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Early Brain Injury / くも膜下出血 / アポトーシス / 脳浮腫 / 血管脳関門 / エダラボン / 脳圧モニタリング / 脳血管攣縮 |
研究実績の概要 |
ラット内頚動脈穿通によるくも膜下出血モデル作成を行った。昨年度はN=90、本年度はN=60のラットに対して手技を施行、くも膜下出血作成直後の死亡率は約20-30%であった。くも膜下出血作成後の脳圧更新は40-200mmHgであったが、脳圧が120mmHgを超えたラットは高率に死亡した。 作成したラットくも膜下出血モデルに対して、本年度はSham群、くも膜下出血群の他に、くも膜下出血後エダラボン治療群を作成、24時間後に安楽死を行い、以下の検査項目につき検討を行った。アポトーシスの検出としてTUNEL染色およびカスパーゼ3をELISAにて測定し、さらに抗ラジカル染色を追加した。脳圧亢進の比例してアポトーシスが増加し、Early brain injuryの発生が確認できた。いずれの項目においてもエダラボン治療群において有意差は得られなかった。脳浮腫については脳乾燥法による重量測定を行ったが、エダラボンによる治療効果は明らかにはできなかった。血管脳関門の破綻についてはMMP-9をELISAにて測定、エダラボンにて有意差を持って治療効果が得られた。酸化ストレスd-ROMを末梢血から測定したところ、エダラボンによる治療効果が確認できた。Early brain injuryに伴う脳血管攣縮とその治療効果につき脳底動脈血管面積測定にて評価を行ったところ、エダラボン治療群にて有意に攣縮治療効果が認められた。 以上の結果の総括から、くも膜下出血後のEarly brain injuryは脳圧亢進に相関すること、エダラボンの治療効果は、とくに血管脳関門破綻抑制によって効果が認められたこと、機序は不明であるが、脳血管攣縮の治療効果も得られたこと、が挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画から種々の変更点はあったものの、くも膜下出血モデルの作成および脳圧モニタリングが可能となったことから、その後のエダラボン治療効果の実験が可能となった。くも膜下出血後灌流固定、生標本摘出後、抗体染色やELISAについてもほぼ予定通り進行した。計画中、脳浮腫評価におけるEvans染色漏出試験が断念されたが、今後代替検査をELISA以外にも試行予定である。なお、実験前仮説ではEBIに対する治療効果はアポトーシス改善によると予想していたが、結果からは血管脳関門破綻抑制のみで有意であった。
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今後の研究の推進方策 |
結果の総括から、くも膜下出血後のEarly brain injuryは脳圧亢進に相関すること、エダラボンの治療効果は、とくに血管脳関門破綻抑制によって効果が認められたこと、機序は不明であるが、脳血管攣縮の治療効果も得られたこと、が挙げられる。 くも膜下出血作成時、特に脳圧亢進が著しいラットにおける死亡率は低減の工夫が今後の課題である。 くも膜下出血直後からのエダラボン投与の有効性が示唆された。エダラボンすなわちfree radical scavengerがどのような機序でこれらの治療効果を発揮しているかが今後の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の成果発表として、2016年5月の国際学会すなわち世界脳神経外科・アメリカ脳神経外科学会にて口頭発表の機会が得られたため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会による口頭発表を行う機会が得られたため、その経費に使用する。
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