研究課題
脳梗塞に対する急性期再開通療法では、再開通療法後に発生する活性酸素種が脳虚血再灌流障害を引き起こし、脳梗塞増大や出血性合併症を起こす。その為、脳虚血灌流障害を防ぐ新たな治療法の開発が急務である。本研究では、我々が開発したナノ粒子化活性酸素消去剤RNP(Nitroxyle Radical-containing Nanoparticle)を、マウス一過性脳虚血モデルに頚動脈投与することにより、活性酸素の発生を抑制し、虚血再灌流障害を抑制するか検証した。マウス一過性脳虚血モデルにおいて、再開通20分後に薬剤を頸動脈投与し、24h後に以下の評価を行った。①RNPの脳梗塞病巣への分布、②Evans blue漏出の比較による脳血管保護効果、③脳梗塞体積の比較による脳神経保護効果、④血液脳関門保護効果、⑤神経細胞のフリーラジカル産生とアポトーシス評価、⑥電子スピン共鳴法 (EPR)による摘出脳の抗酸化能評価。その結果、RNPは脳血管壁への分布を認め、有意にEvans blueの漏出を抑制し、脳梗塞を減少させた。また、血液脳関門を保護するとともに、神経細胞内のフリーラジカルの産生、及びアポトーシスを抑制した。EPRによる抗酸化能の評価では、RNP投与群の脳は、ヒドロキシラジカル、ペルオキシラジカル、スーパーオキシドにおいて高い抗酸化能を示した。平成28年度の研究成果として、頚動脈投与したRNPが脳血管壁のみならず、血液脳関門を越えて血管外腔の神経細胞の周囲に集積していることを確認した。また、RNPは神経細胞における活性酸素発現、アポトーシス、DNA損傷を抑制することを示した。このことは、RNPが血液脳関門と中枢神経細胞からなる神経血管ユニットを保護する可能性を示した。RNPは、脳虚血領域の血管内皮細胞と中枢神経細胞を保護することにより、脳梗塞の増悪と頭蓋内出血合併症を抑制すると考えられた。
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