研究課題
【研究の概要】ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるボリノスタットには、悪性神経膠腫の薬剤耐性のひとつであるMGMT活性を抑制する作用を有するが、その機序は不明な点が多い。本研究では、オートファジーとの関係に注目し、ボリノスタットによるMGMT活性抑制機序について検討した。【具体的内容】①細胞増殖抑制効果:悪性神経膠腫の代表薬であるテモゾロミド、今回注目したボリノスタットには、いずれも悪性神経膠腫細胞株に対して、容量依存性の細胞増殖抑制効果を認めた。両者を併用することで、さらに強力な細胞増殖抑制効果が認められた。②MGMT蛋白の発現と局在:MGMT蛋白の発現を、Western blot法で確認すると、ボリノスタット群においてMGMT蛋白の発現が亢進していた。その局在について、蛍光免疫染色法で確認すると、MGMT蛋白の局在は核内から核外へ移行していた。さらに、細胞質内に移行したMGMTは、選択的オートファジーであるシャペロン介在性オートファジーの指標であるLAMP2aと局在が近接していた。【意義と重要性】MGMTがテモゾロミド耐性を発揮するためには、核内に局在している必要がある可能性が示唆された。さらに核外で過剰に発現したMGMT蛋白は、シャペロン介在性オートファジーで分解される可能性が示唆された。本研究を通して、MGMT蛋白をはじめとする薬剤耐性酵素の局在を変化させることは、薬剤耐性克服の新たな治療戦略である可能性が示された。
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Stem Cells
巻: - ページ: -
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