脊髄損傷によって途絶えた神経軸索が再生され、再び脳から腰髄前角細胞まで繋がることで下肢運動機能回復を得たと解剖学的に考えており、現在、その再生過程を補助し、促進することが可能となる神経栄養因子を持続的に付加する骨髄間葉系細胞に注目している。そこで、神経栄養因子が一定期間持続的に脊髄腔内へ分泌されたことによって回復を示した培養自家骨髄間葉系細胞移植による脊髄再生治療に着目し、この神経栄養因子効果を嗅粘膜移植法に効果的に付加する新規移植法の開発を目指す。ラット脊髄損傷モデルに対して嗅粘膜移植を実施し、さらにcombined therapyとして、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)を髄腔内投与し、その機能回復効果、効果発現の短縮効果、軸索伸長効果、及び軸索中継細胞 (Relay-neurons)数を主要評価項目として実験し、有効性を示す計画である。主要評価項目であるRelay-neuronsは、移植後の神経再生の概念であるneuron relay formationの中で、重要な役割を果たすが、その移植片由来のRelay-neuronsが、移植嗅粘膜から供給され脊髄固有の介在神経による神経再生と共同で下肢運動機能の回復に寄与し、嗅粘膜移植細胞から移植片由来のRelay neuronsが供給されることは、Spine.2014. Jul 15;39(16):1267-73の中で報告した。ただし、嗅粘膜移植細胞移植片由来のRelay neuronsが下肢運動機能改善に対する寄与の度合いについては圧挫モデル特有の問題があり、不明のままである。したがって、評価項目である嗅粘膜移植細胞移植片由来のRelay neuronsの下肢運動機能改善の寄与度の証明として、間接的に、人での慢性期脊髄損傷患者に対する嗅粘膜移植症例で下肢運動機能回復を示しているケースにおける脊髄DTI、脳fMRIの解析を行い、その結果から上記証明の可能性についても検討した。
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