研究課題
オキシトシンは様々な虚血性疾患において保護作用をもつことが報告されている。しかしながら、脳梗塞に対するオキシトシンの詳細な作用メカニズムについては明らかになっていない。本研究では、脳梗塞の病態進行に及ぼすオキシトシンの影響を検討するために、脳梗塞後におけるオキシトシン受容体の発現変化を解析した。一過性中大脳動脈閉塞モデルラットの脳を摘出し、梗塞巣、その周辺領域、正常領域においてオキシトシン受容体の発現量を解析した。その結果、施術後2日目の梗塞巣の周辺領域においてオキシトシン受容体の発現量の増加が認められ、その後経時的に減少した。この結果から、脳梗塞後のオキシトシン受容体の発現には経時的・空間的変化があることが明らかになった。施術後2日目の梗塞巣周辺領域には、変性細胞が多く存在している。その中でも、神経細胞およびアストロサイトがオキシトシン受容体を発現していることが明らかになった。この変性細胞が存在する領域の拡大(=梗塞巣領域の拡大)を抑制することは脳梗塞の予後に大きく影響を及ぼす。従って、これらの細胞種をオキシトシンのターゲット細胞として、現在はオキシトシンの効果を分子細胞レベルで検討している。今後は、これらの結果を踏まえ、オキシトシンを脳梗塞の治療に結びつける予定である。
3: やや遅れている
産前・産後休暇のため研究を一時中断した。そのため、当初の研究計画に遅延が生じてしまった。
今年度は、脳梗塞後のオキシトシン受容体の発現分布、オキシトシンのターゲット細胞を明らかにすることができた。オキシトシンが変性神経細胞や変性アストロサイトにどのような影響を及ぼすのかを分子細胞レベルで明らかにすることが、喫緊の課題である。そのため、虚血ストレス条件(低グルコース、低酸素)下で、各細胞を培養する。その後、各細胞の生存状態(免疫染色、イムノブロット)や神経保護または増悪関連因子を測定することにより解析を行う。これらの結果を足がかりに脳梗塞の治療薬としてのオキシトシンの効果をin vitro、in vivoの両面から評価する。
産前・産後休暇により研究を一時中断したため、使用を計画していた実験を遂行するまでに至らなかった。
研究費は細胞培養関連試薬一式、実験動物、生化学研究用試薬、各種抗体購入費および成果発表費用(国内・国外学会参加、外国語論文校正費用、論文印刷費等)、共同機器使用料として使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Exp Neurol
巻: 277 ページ: 150-61
10.1016/j.expneurol.2015.12.016