研究課題
オキシトシンが、虚血性疾患に対する保護作用をもつことが報告されている。しかしながら、その詳細な作用メカニズムについては明らかになっていない。本研究では、脳梗塞の病態進行に及ぼすオキシトシンの効果を検討するために、脳梗塞モデルラットを用いて脳梗塞後におけるオキシトシン受容体の発現変化を解析した。脳梗塞モデルはラットの中大脳動脈を一過性に閉塞し、作成した。術後6時間、1-7日後のラットから脳を摘出し、梗塞巣、その周辺領域、正常領域におけるオキシトシン受容体の発現量を解析した。その結果、施術1日後の梗塞巣の周辺領域においてオキシトシン受容体の発現が高度に認められ、その発現はその後経時的に減少した。一方、梗塞巣および正常領域においては有意な変化は認められなかった。更に、これらの発現上昇は施術1日後の前頭葉の梗塞巣周辺領域で著しく高いことを発見した。この結果から、脳梗塞後のオキシトシン受容体の発現には経時的・空間的変化があることが明らかになった。そこで、オキシトシン受容体を発現している細胞種の特定を試みた。この細胞種をオキシトシンのターゲット細胞として、現在はオキシトシンの効果を分子細胞レベルで検討している。これまでの実験的検討から、オキシトシン受容体は脳梗塞後特定の期間に梗塞巣周辺領域で発現が亢進することが明らかになった。今後は、これらの結果をエビデンスとして、オキシトシンを脳梗塞の治療に結びつける予定である。
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