研究課題
視床下核などに対する深部脳電気刺激療法（DBS）は、パーキンソン病（PD）患者のwearing-off を改善し、ADL、QOL の向上をもたらすことが可能なため、重度のPD 患者に対する有用な治療手段として確立している。近年、諸外国より、認知行動療法、薬物療法などのいかなる治療によっても十分な効果を得られなかった重度のうつ病患者に対してDBS が有効だったという報告が相次いで寄せられている。しかし、我々日本の脳外科医の立場からすると、動物実験に基づくscientific なデータの乏しさゆえ、DBSでうつ病を治療することが、医学的にも倫理的にも妥当なのか判断できないのが現状である。このような背景から、本研究ではうつ病に対するDBS の効果について、動物実験によるscientific な評価を行うことを目標に、まずはうつ病モデルの評価を行うことを目標とした。Wistar-Kyoto ラットはそれ自体がうつ病モデルとして利用できるという方向がある。また、DBSでは電極を脳内に挿入する必要があるため、まずはWistar-Kyoto ラットの脳内に微小シリンジを用いて6-OHDA注入してパーキンソン病モデルを作成し酸化ストレス度・抗酸化力を測定することとした。すると注入2週の段階で酸化ストレス度は軽度から中等度の上昇が認められたが、抗酸化力は適値を保った。DBSの侵襲度はパーキンソン病モデル作成に伴う侵襲度と比べると同じかもしくは軽いと推察されるが、酸化ストレス度と抗酸化力の観点からも十分実験に耐える侵襲度と推察された。
2: おおむね順調に進展している
うつ病モデルにはいくつかの作成方法があるが、どれを使うかに関しての評価方法として、酸化ストレス度や抗酸化力といった指標で評価できたため。
通常のSDラットで同じパーキンソン病モデルを作成して、酸化ストレス度や抗酸化力を評価し、うつ病モデルとで違いがあるか検討したい。また、実際にDBSで刺激する部分に電極を挿入することで、酸化ストレス度や抗酸化力にどのような影響を及ぼすのか検討したい。これを行うことで、DBSの電極挿入によるストレスや、DBSの刺激によるストレスといったものをパーキンソン病との比較の観点から評価したい。
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