研究課題
血清糖タンパク(Gc protein)は炎症によって誘導されるβ-galactosidaseやsialidaseといった酵素によりGc-MAF(Group-specific component derived Macrophage Activating Factor)に変化する(右下図)。このGc-MAFによりマクロファージは強力に活性化され腫瘍細胞の貪食が起こる。またGc-MAFは免疫賦活化作用により抗腫瘍効果を示すことや、腫瘍の栄養血管新生を抑制することが示されている。Gc-MAFはヒト血清から製造可能であり実際にヒトに投与され、HIVや乳ガン、大腸がん、前立腺がんに対する抗腫瘍効果が報告されている。一方、GBMに対する効果はほとんど検討されていないがGBMにおいてもGc-MAFが抗腫瘍効果に寄与する可能性が期待される。本年度はヌードマウスの脳腫瘍細胞xenograftモデルにおけるGc-MAFの抗腫瘍効果を調べた。脳腫瘍細胞を移植した直後からのGcMAF投与は抗腫瘍効果を示したが、腫瘍細胞移植後の腫瘍増殖を確認後にGcMAFを投与すると逆に腫瘍の増殖が認められた。他の実験から、GcMAFはアジュバント作用を有することが推察されたため、GcMAF投与前にM1マクロファージを誘導させる薬剤との併用作用が期待されたため、M1マクロファージを誘導薬剤の検討を行った。抗真菌薬のamphotericin BはTNFαを誘導することが知られているため、M1マクロファージの賦活作用が期待される。そこで癌幹細胞由来の脳腫瘍モデルにおけるamphotericin BによるM1およびM2マクロファージの発現と生存期間への影響を調べた。結果、amphotericin Bにより生存期間の延長が認められ、M1マクロファージの有意な増加も確認された。そこでamphotericin BとGcMAFとの併用による抗腫瘍効果を検討することとした。
2: おおむね順調に進展している
GcMAFは単独で有効性が示されなかったが、期待に反する作用が確認でき、アジュバント作用を示す可能性が示唆される。そこで併用可能な薬剤での検討を行い、有効性が認められたため、今後GcMAFとの併用での有効性を持つ薬剤を他にも検討を行い、それらとの併用効果を調べる予定である。査読あり
これまでのグリオブラストーマ細胞由来xenograftモデルに代えて、マウス癌幹細胞由来の脳腫瘍モデルを作製し、M1マクロファージ賦活剤とGc-MAFの併用による脳腫瘍に対する抗腫瘍効果を検討する。すでに必要な定位装置などの機材は準備できており、安定した脳腫瘍モデルでの抗腫瘍効果とそのメカニズムを解析する。
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World Neurosurg
巻: in press ページ: in pess
10.1016
Cancer Lett
巻: 356 ページ: 496-505