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2014 年度 実施状況報告書

スピルリナを用いた悪性グリオーマに対する新たな免疫療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26861154
研究機関高知大学

研究代表者

川西 裕  高知大学, 医学部, 研究員 (90527582)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードスピルリナ / 悪性グリオーマ / 免疫療法
研究実績の概要

申請者はこれまでSpirulina複合多糖体(CPS)がグリオーマに対して自然免疫のみならず細胞性免疫応答も賦活することで抗腫瘍免疫応答を増強することを解明した。さらに、抗腫瘍効果の発現にはIL-17の分泌制御による血管新生の抑制が関与することも見出した。
細胞性免疫応答に関してはCD4陽性およびCD8陽性Tリンパ球がともに賦活されて抗腫瘍免疫が増強されることを報告した。一方、抗腫瘍効果を担う自然免疫系の免疫担当細胞についてはasialo GM1陽性細胞が担うことを見出していたがそれ以上の詳細な解析が行えていなかった。今回、腫瘍組織に含まれるNK細胞のマーカーであるCD49b陽性細胞およびマクロファージの抗体であるF4/80陽性細胞について検討したところ腫瘍細胞内にはマクロファージの誘導が亢進していることが示唆された。さらにF4/80陽性細胞数と腫瘍の抑制効果を検討したところ明らかな相関関係が認められた。以上の結果によりSpirulina CPSの抗腫瘍効果は自然免疫系では主にマクロファージによって担われていることが示唆された。
血管新生の抑制について検討を行った。IL-17を分泌するTh17あるいは免疫抑制効果を有するTregはナイーブT細胞からTGF-βとIL-6により誘導される。グリオーマでは腫瘍内の TGF-β, IL-6 の濃度が高いことが知られており、Th17あるいはTregへの分化が促進されていると考えられる。これまでの実験成果によりSpirulina CPS はTGF-β, IL-6 の産生を制御することが示唆されている。Th17およびTregへの分化が制御された結果、血管新生が抑制された可能性があると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Spirulina CPSの血管新生抑制効果の作用機序や自然免疫系の担当細胞の解析などこれまで明らかにされていなかった課題について解明し、研究成果は論文として発表することができた。ただし、グリオーマは脳腫瘍であるためSpirulina CPS を投与することにより免疫環境の異なる脳内に移植したグリオーマ細胞に対しても抗腫瘍効果を発揮することを確認する必要がある。平成26年度にマウス脳内にRSV-M を移植し、Spirulina CPS 投与群と対照群に分けSpirulina CPS 投与群において腫瘍抑制効果があるかを検討する予定であったが実験できておらず平成27年度の研究課題として継続する。

今後の研究の推進方策

今後は、マウス脳内に移植したグリオーマ細胞に対する抗腫瘍効果についての解析を行う。マウス脳内にRSV-Mを移植し、Spirulina CPS投与群と対照群に分け腫瘍抑制効果を検討する。本学ではin vivo imager及び実験動物用のMRIが導入されており生体での腫瘍細胞の動態や治療経過を観察可能である。
さらに、TLR4以降のシグナル伝達系の解析を行いたい。E.coli LPS とSpirulina CPS はともにTLR4に作用することを明らかにしたが、Spirulina CPS についてはTLR4以降の経路についてはまだ解明されていない。E.coli LPS はTLR4を活性化しMyD88を介した経路で炎症性サイトカインを産生することが知られている。TLR4の下流にはMyD88非依存性のシグナル伝達経路が存在することも知られており、この経路がT細胞活性化やIFN-βなどの誘導に関与しており腫瘍免疫の形成にはこの経路の活性化が重要であると報告されている。そこでMyD88のノックアウトマウスを用いてSpirulina CPS投与により腫瘍効果やサイトカインの産生に影響が生じるかを調べることでTLR4以下の経路について解明することができると考えている。

次年度使用額が生じた理由

グリオーマは脳腫瘍であるため、Spirulina CPS を投与することにより免疫環境の異なる脳内に移植したグリオーマ細胞に対しても抗腫瘍効果を発揮することを確認する必要がある。平成26年度にマウス脳内にRSV-M を移植し、Spirulina CPS 投与群と対照群に分けSpirulina CPS 投与群において腫瘍抑制効果があるかを検討する予定であったが、研究の進行状況により次年度に持ち越したため次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

脳内の腫瘍に対する治療効果の評価は、従来マウスの脳を薄切し免疫組織化学的手法を用いることが一般的であったが、本学ではin vivo imager(IVIS;caliper 社製)及び実験動物用のMRIが導入されており生体での腫瘍細胞の動態や治療経過を観察可能である。In vivo imager で用いる蛍光蛋白(tdTOMATO;蛍光極大波長581nm,非常に強い蛍光を示すDsRed バリアント)を遺伝子導入したRSV-M 細胞株も作成済みであり実験の準備も整っている。マウスなど実験動物と試薬などの費用として用いる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Spirulina Complex Polysaccharides Suppress the Growth of Glioma in T Lymphocyte- and Macrophage-dependent Manner2014

    • 著者名/発表者名
      Akira Tominaga, Yu Kawanishi, Takahiro Taguchi, Toshio Yawata, Hiromi Okuyama, Yutaka Kusumoto, Shiro Ono, Keiji Shimizu
    • 雑誌名

      Kuroshio Science

      巻: 8-1 ページ: 101-108

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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