研究課題/領域番号 |
26861161
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
山内 忍 獨協医科大学, 医学部, 助教 (70433589)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 硫酸化糖鎖 / プロテオグリカン / 硫酸基転移酵素 / 脳微小環境 / 神経幹細胞 / 神経細胞 / グリア細胞 / 神経分化 |
研究実績の概要 |
幹細胞の増殖・分化といった生理機能は、ニッチと呼ばれる細胞微小環境により制御されていると考えられている。神経幹細胞ニッチの主要な構成分子のひとつがグリコサミノグリカン(GAG)糖鎖であるが、神経細胞分化制御に関与するGAGの機能的役割については不明な点が多い。そこで、本研究では、GAG糖鎖が神経幹細胞ニッチにおける構造的中核として、糖鎖構造依存的に神経幹細胞の分化過程を制御していることを明らかにすることで、中枢神経損傷に対する新たな細胞移植治療への応用の足がかりを作ることを目的としている。 昨年度までにラット胎児脳由来神経幹細胞培養系の分化処理前後でGAG糖鎖(コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸(CS/DS)糖鎖、ヘパラン硫酸(HS)糖鎖、ケラタン硫酸(KS)糖鎖)全体に構造的変化が起きている可能性を示唆する実験結果が得られている。 本年度は、この分化処理前後におけるGAG糖鎖の構造的変化の可能性について、分化後の各神経系細胞ごとのGAG糖鎖構造の質的、量的変化に関する発現プロファイルを得るための検討をおこなった。ラット胎児脳由来の神経幹細胞、および、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞と成熟オリゴデンドロサイトそれぞれの単離培養系からRNAを抽出し、CS/DS、HS、KS糖鎖の微細構造変化に関与する糖鎖修飾酵素遺伝子群の発現量を測定した。その結果、分化後の全ての細胞に共通する変化を示す酵素遺伝子群と特定の神経系細胞分化に特異的な変化を示す酵素遺伝子群とに分類できた。今後、GAG糖鎖構造依存的な神経系細胞の分化制御機構についてさらに検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、GAG糖鎖修飾酵素遺伝子群の発現解析により類推された「分化特異的GAG糖鎖構造」を遺伝子工学的に再現した神経幹細胞培養系を用いて分化制御機構に関する検討を行う予定であったが、分化特異的GAG糖鎖構造の絞り込みが完了していないため、上記培養系を用いた評価実験が計画どおりに進んでいない。しかしながら、前述のとおり、これまでの実験から、研究代表者らが先行研究で報告したCS/DS糖鎖以外にも、HSやKS糖鎖においても各神経系細胞への分化に伴う興味深い糖鎖構造変化の可能性を示唆する結果が得られている。この結果は、神経系細胞の分化制御機構に関して、細胞微小環境におけるGAG糖鎖構造のダイナミクスという側面からの分子的な理解を与える鍵となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から当初の予想どおり神経幹細胞から各神経系細胞への分化に伴うGAG糖鎖全体のダイナミックな構造変化の可能性を示唆する結果が得られた。この構造変化と分化制御との関わりについてさらなる理解を深めるために、引き続き分化特異的なGAG糖鎖構造を模した神経幹細胞培養系による評価実験を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度と同様に、試薬や器具などの消耗品について、できるだけ低価格の物品の購入に努めたことや、当初計画していた分化特異的なGAG糖鎖構造を模した神経幹細胞培養系による評価実験が計画通りに進まず、当該実験に必要な研究費支出が減少したことなどから、本年度の研究費に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に使用予定であった研究費用の残額を次年度に繰り越して研究計画遂行のために使用する。具体的には、試薬類や実験器具等の消耗品や実験動物の購入、研究成果をまとめるための論文作成や論文投稿に必要な諸経費などに使用する予定である。
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