研究課題/領域番号 |
26861163
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大木 宏一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10348633)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / 神経幹細胞 / iPS細胞 / 幹細胞移植 / 機能障害 / 行動解析 |
研究実績の概要 |
脳梗塞の機能回復に向けての治療法として神経幹細胞等の移植療法が考えられているが,その際の適切な移植時期等の検討は行われていない.現在までに報告されている基礎実験では梗塞作成後1週間以内での細胞移植が行われているが,亜急性期での移植による効果を検討した報告はないため,本年度は梗塞作成の3週間後の亜急性期に細胞を移植する実験を行った. 具体的には,マウスにおいて40分間の一過性中大脳動脈閉塞にて梗塞巣を作成,その3週間後にiPS細胞由来の神経幹細胞を脳内巣周囲に移植,適切な時期に行動解析(staircase test)を行い,移植後11週後の脳切片での組織学的検討を行った. 行動解析においては,梗塞後8週(移植後5週)において,細胞移植群の方がvehicle 投与群に比して有意に機能障害が少なかったが(unpaired t-test p= 0.029),その後vehicle 投与群の機能障害も改善傾向となり,移植11週後では両群に差は認められなかった. 細胞移植群での移植11週後での細胞の生存を検討したところ,6匹中2匹で生存を確認し得たが,4匹では細胞は生着していなかった. 以上の結果より,梗塞後亜急性期のiPS細胞由来の神経幹細胞移植により移植後比較的早期において機能改善を認めたが,非移植群の機能も自然回復したために,移植による機能回復の効果の持続があるかは確認できなかった.また移植後に細胞が生着した個体は半数以下であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行動解析の結果を慎重にかつ長期に観察した為に,組織学的検討の開始が遅れた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は移植群と非移植群における梗塞体積の比較や,生着した移植幹細胞の分化を組織学的に検討する.併せて炎症の程度等を両群間で比較する予定であるが,脳組織をとりだした時点での行動解析では両群間に有意差を認めていないため,再度実験を繰り返し,機能障害に差を見出した時点(移植後5週)での脳組織を採取し,そのメカニズムを検討する必要性もあると考えられる.
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