研究実績の概要 |
当施設で手術が施行された頭蓋底軟骨肉腫の標本について、比較ゲノムハイブリダイゼーション(comparative genomic hybridization; CGH)法を用いた全染色体解析とisocitrate dehydrogenase (IDH)1/2遺伝子の点突然変異のシーケンスを行った。また、脊索腫の診断に有用である考えられているbrachyuryタンパク質の発現を免疫染色によって調べた。CGHでは、8q21.1, 19, 2q22-q32, 5qcen-q14, 8q21-q22, and 15qcen-q14の増幅などの染色体異常が見つかった。これらの異常はこれまでに他の部位の軟骨肉腫において指摘されていたものと一致する傾向が認められた。また、IDH1/2の点突然変異も複数の症例において認められた。これらは、近年central typeの軟骨肉腫において頻繁に認められている異常であり、頭蓋底軟骨肉腫はこのtypeが多いということが示唆された。また、brachyuryタンパク質は比較の脊索腫では陽性であったものの、軟骨肉腫においては全例で陰性であった。これらの結果から、頭蓋底脊索腫と軟骨肉腫の鑑別において、IDH1/2の点突然変異とbrachyuryタンパク質の双方を調べることが非常に有用であることが示唆された。これらの知見は、すでに米国脳神経外科学会雑誌に投稿、受理されており、出版待ちの状態である。
|