研究課題
前年度より解析症例数をさらに拡大し、国内の成人神経膠腫の初発計約950例の凍結検体抽出DNAの遺伝子解析をおこなった。遺伝子解析については、前年度からのパイロシークエンス法やサンガーシークエンス法によるIDH, TERT、MGMTの解析、MLPA法による1p19qコピー数の解析に加え、IDH野生型の腫瘍を中心にH3F3A, BRAF, CDKN2Aについてもパイロシークエンス法やMLPA法による解析をおこなった。一方、遺伝子解析をおこなった例の臨床情報(全生存期間・無増悪生存期間、治療内容など)の収集をおこなった。前年度同様、IDHとTERTの変異の有無による分子分類をおこない、予後との関係や、各分類内での特徴を検証した。その結果、1)この分子分類は病理組織型と強く相関し、病理組織型より予後が明確に異なる4群にわけることが検証された。さらに、2)IDH, TERTの共変異型腫瘍は、1p19q完全共欠失のある腫瘍をほぼ包含し、IDH-TERTの共変異型腫瘍で1p19q完全共欠失のない腫瘍も同様に予後がよいことから、従来重要な予後良好因子とされていた1p19q完全共欠失の代用マーカーとなりうること、また、3)IDH変異型腫瘍においては従来、WHO grade IV相当の腫瘍が大半を占め一様に予後が悪いと言われていたが予後の悪くない腫瘍も包含されることなど、の詳細な知見があきらかとなってきている。
2: おおむね順調に進展している
テロメラーゼ逆転写酵素であるTERTプロモーターの変異のバイオマーカーとしての意義を詳細な検討を通して明らかになってきており、順調に進行していると考えられる。
H28年度は、前年度までに集積された臨床情報と遺伝子解析結果を中心に、より詳細に検討をおこなう予定である。特に、TERTプロモーター変異の有無は他の一部遺伝子変化の状態に応じ、臨床的意義が異なることが示唆されており、この点を多変量解析なども通して詳細に検討する予定である。
DNA解析試薬およびデータ保存用ハードディスクは必要時に順次購入しているため、解析にあたり繰越金が発生した。
H28年度の研究計画は、H27年度の実施研究計画の継続内容と、さらに発展的内容も含まれる。延長申請に伴う前年度からの繰越金は、解析試薬の購入とデータ保存設備の購入必要に充てる。また、新たな知見の解析結果報告のため、米国脳腫瘍学会やInternational Conference on Brain Tumor Research and Treatementへの参加を予定しており、これに対する費用などにも充当する予定である。
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