研究課題
国内で治療された成人神経膠腫758例の大規模コホートを形成し、凍結検体抽出DNAを用い、IDH1/2, TERTプロモーター, H3F3A, BRAFなどの主要な遺伝子変異の有無の解析、およびMGMTプロモーターのメチル化、1番・19番染色体のコピー数の解析をおこなった。これらの遺伝子変化と、年齢などの患者特性・治療内容・生存期間とを比較し、バイオマーカーとしての意義を検討した。IDH1/2変異やMGMTメチル化状態はこれまでの報告と同様、予後良好因子であることが確認された。一方、TERTの変異は、IDH1/2変異型の腫瘍においては予後良好因子である一方、IDH1/2野生型腫瘍においては予後不良因子であるという、特異な所見が得られた。さらに、IDH1/2とTERTの共変異がある腫瘍の大部分は1p/19qの完全欠失を持つことが明らかとなった。これらから、IDH1/2およびTERTの変異の有無により成人神経膠腫を予後の観点から4型に分類できることが明らかとなった。さらに、標準的放射線化学療法が行われたIDH野生型膠芽腫451例からなる臨床背景が均一なコホートで、TERTとMGMTの予後因子としての意義を検討した。TERTとMGMTのそれぞれが、標準的放射線化学療法が行われた膠芽腫の予後に影響があり、さらに、双方の予後因子としての意義に交互作用があることが明らかとなった。以上より、現行のグリオーマのWHO分類(2016)で推奨されているIDH1/2, 1p19qに加え、テロメラーゼ逆転写酵素TERTプロモーターの変異の有無を調べることで、成人神経膠腫をより詳細に予後分類ができると考えられた。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Acta Neuropathologica Communications
巻: 41 ページ: 79
10.1186/s40478-016-0351-2.