研究課題
これまでCarbon nanotubes (CNTs) に対する生物学的反応の評価は、吸い込みを対象として肺や腹腔にある組織や細胞で行われることがほとんどであった。しかし、CNTsを生体材料に応用する場合には、使用する部位の組織や細胞によって、その生物学的反応が大きく異なると考えられる。近年CNTsを骨再生医療の足場材に用いる研究、人工関節の強化剤fillerに用いる研究、関節リウマチの薬剤伝達系に用いる研究等が進んでおり、これらの場合には、CNTsを応用した生体材料を関節内に使用する可能性が高い。本研究は、関節内の主たる生物学的反応の場である滑膜の、multi-walled CNTs (MWCNTs)に対する反応を評価した。In vivo試験で、ラットの膝関節にMWCNTsを注入すると、量依存性に滑膜深部に取り込まれ肉芽組織を形成したが、炎症反応は早期に鎮静化した。In vitro試験で、MWCNTs はhuman fibroblast like synoviocytes (HFLS)の細胞内に取り込まれたが、マクロファージであるRAW264細胞と比較して、細胞毒性は低かった。またMWCNTsはHFLSの放出するサイトカインやケモカインを抑制する傾向を認めた。本研究によって、MWCNTsに対して滑膜が特異的な生物学的反応を示すこと、MWCNTsを関節内に使用する際には、一定量以下であれば滑膜に対して大きな問題がないことが明らかになった。本研究の結果は、肺や腹腔の反応とは明確に異なるものであり、今後CNTsを生体材料として臨床応用するためには、使用する部位に合致した詳細な生物学的反応評価が必要である。
すべて 2015
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Scientific Report
巻: 5 ページ: 1-11
10.1038/srep14314