研究課題/領域番号 |
26861180
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
青木 薫 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (30467170)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多層カーボンナノチューブ / 肉腫 / 抗がん剤 / 塩酸ドキソルビシン / Drug delivery system / 化学療法 |
研究実績の概要 |
骨肉腫の細胞株143B細胞を1.0×106cellずつ10週齡,雄のヌードマウス(BALB/ c-nu/nu)の右脛骨に注射し,骨肉腫モデルマウスを作成した.注射する直前に多層カーボンナノチューブ(multi-walled CNT; MWCNT)を混合し,1.0μg/ml,10μg/mlの濃度とした群を作成した.陽性コントロールとして一般的な肉腫に対する抗がん剤である塩酸ドキソルビシン(DOX)を注射直前に加えて1.0μM,5.0μMの濃度とした群を使用した.各群n=3とした.注射後4週で動物用マイクロCT撮影にて下腿注射部局所に発生した腫瘍サイズを測定し,肺組織の病理組織検査にて肺転移の有無,個数を評価した. 骨肉腫細胞注射後4週の腫瘍サイズはコントロール群が1729mm3,MWCNT 1.0μg/ml群が1399 mm3,10μg/ml群が394 mm3であり,MWCNTは注射部位局所での骨肉腫の発育を濃度依存性に抑制した.また,肺組織の1断面の平均転移数はコントロール群で5.5個,MWCNT 1.0μg/ml群が2.2個,10μg/ml群が0.7個でありMWCNT 10μg/ml郡では骨肉腫モデルマウスにおいてコントロール群と比較して,肺転移を有意に抑制した. また,信州大学工学部にて塩酸ドキソルビシン(DOX)を複合したMWCNTを作成した.MWCNTに界面活性剤であるPluronic F-127を加えてUltrasonicator(US300T,Nissei)による2時間の処理にてMWCNTを分散させた.DOXを界面活性剤入りMWCNTに混合し,さらに30分sonicationをすることにより,MWCNT複合DOXを作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MWCNTはその繊維が絡まり合い,「ダマ」になっており,均一分散が困難であった,通常のsonicatorでは十分に分散させることができず,horn-typeのUltrasonicatorを用いることにより,十分に分散させ,抗がん剤を複合させることができた.抗がん剤複合CNTの作成が遅れたため,その後の細胞実験,動物実験が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
今後,抗がん剤複合MWCNTの抗腫瘍効果について評価を行う.肉腫細胞株に対する抗腫瘍効果の評価として,抗がん剤複合MWCNTを培養した肉腫の細胞株へ添加し,腫瘍細胞への影響を評価する.ControlとしてMWCNTのみ,抗がん剤のみを加えた群を作成する.肉腫の細胞株としては引き続きヒト骨肉腫細胞(143B細胞)を使用する.また,肉腫モデル動物に対する抗腫瘍効果の評価として抗がん剤複合MWCNTを肉腫モデル動物に投与し,その抗腫瘍効果を評価する.抗がん剤複合MWCNTは腫瘍への局所投与を行う.肉腫モデル動物はヌードマウスへの143B細胞移植により作成する.肉腫細胞移植を行った肉腫モデルマウスにも抗がん剤複合MWCNT,抗がん剤のみ,MWCNTのみを投与し,その抗腫瘍効果を評価する.抗腫瘍効果は小動物用CTによる生体の観察,測定を同一個体で経時的に行い,また,屠殺し採取した局所および肺の病理組織像を観察する. 信州大学工学部にて引き続き,抗がん剤複合MWCNTの解析を行っていただく.透過型電子顕微鏡による観察,ラマン分光分析等により解析を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
抗がん剤複合MWCNTの作成に時間がかかったため,初年度中に抗がん剤複合MWCNTを使用した実験を開始することができなかったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にはin vitroの細胞実験とin vivoの腫瘍モデルマウスによるMWCNT複合抗がん剤の効果についての実験を行う予定である.in vitro用の細胞については購入して増殖させ,冷凍保存してあるため,次年度使用額は主に動物実験の動物の購入,飼育およびそれに関わる試薬,実験器具の購入に使用する予定である.
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