骨肉腫を代表とする骨軟部肉腫の治療効果を向上させるために,drug delivery systemとしての働きを期待されている多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes; MWCNT)に抗がん剤を複合させ,その骨肉腫に対する効果を評価した.抗がん剤としてドキソルビシン(Doxorubicin;DOX)を複合させたDOX複合MWCNTを作成した.DOX複合MWCNTは界面活性剤であるPluronic F-127と混合し,sonicationを30分行うことにより作成した.作成したDOX複合MWCNTはフォトルミネッセンス法にてMWCNTにDOXが吸着していることを確認した.DOX複合MWCNTを培養中のヒト骨肉腫細胞(143B細胞)に添加し,その抗腫瘍効果を確認した.培養中の143B細胞にDOXのみ,MWCNTのみ,DOX複合MWCNTをそれぞれ添加し,添加後24時間でAlammerBlue Assayを行い,細胞増殖を評価した.その結果,DOX複合MWCNT群にて,MWCNTのみ,DOXのみを添加した群に比べ,有意に細胞増殖を抑制することを確認した.また,143B細胞を免疫不全マウスであるヌードマウス(BALB/c-nu/nu)の脛骨に投与した骨肉腫モデルマウスにて,MWCNTを局所投与した群にて骨肉腫の肺転移数が抑制されることを確認した. 骨肉腫細胞に対してDOX複合MWCNTは,抗がん剤単独,MWCNT単独で投与するよりも,優れた抗腫瘍効果を示した.
|