研究課題/領域番号 |
26861184
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
竹上 徳彦 三重大学, 医学部附属病院, 医員 (20727664)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 椎間板変性 / RANKL / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
ラットの胸腰椎椎間板より線維輪 (AF)、髄核 (NP)を分離し単層培養を行い、mRNAレベルでの発現をreal time-PCR法を用いて定量的評価を行った。 1. ラット椎間板細胞(培養)におけるRANK/RANKL/OPG 系のmRNAレベルでの発現をAF細胞およびNP細胞間で比較検討した。Receptor activator of NF-кB ligand(RANKL)およびOsteoprotegerin (OPG)のmRNAレベルでの発現量はAF細胞、NP細胞間で差を認めなかったが、NP細胞におけるRANKのmRNA発現量はAF細胞に比べて有意に高値であった。 2. ラット椎間板細胞(培養)においてRANK/RANKL/OPG 系の機能解析を行った。1) 炎症性サイトカイン刺激がRANK/RANKL/OPG 系の発現に与える影響を検討した。Interleukin -1 beta (IL-1β)刺激によりAF細胞、NP細胞ともにRANKLのmRNA 発現量は有意に増加していた。またNP細胞においては、RANKおよびOPGのmRNA発現量も有意に増加していた。2) RANKLシグナルが椎間板細胞の基質代謝へ与える影響を検討した。まず培養細胞にRANKLのみの単独投与を行ったところ、炎症性サイトカイン(IL-1β)、タンパク分解酵素であるMatrix metalloproteinase - 3 (MMP-3), MMP-13の発現量に有意な変化は認めなかった。一方で、椎間板変性の微少環境を模倣する目的で、炎症性サイトカイン存在下においても同様にRANKLを投与したところ、IL-1β, MMP-3, MMP-13の発現量は有意に上昇した。 以上の結果よりラット椎間板にける線維輪および髄核細胞は、それぞれがRANK/RANKL/OPG系の発現を有しており、炎症性サイトカインの刺激はRANK/RANKL/OPG系の発現を増強させることが判明した。RANKにRANKLが結合することにより、炎症性サイトカインの発現が活性化する事が知られている。椎間板内では炎症性サイトカインはRANKLシグナルに拍車を掛け、これらが相互的に椎間板変性の進行に関与する可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではhuman RANKL中和抗体を用いて培養実験を予定していたが、到達できていない。しかしながら、当初は平成27年度に予定していたヒトの椎間板を用いた実験も開始しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
腰椎手術時に摘出したヒト椎間板組織を用いる。 1. RANK/RANKL/OPG 系の発現と椎間板変性度(MRI 評価)との関連性を免疫組織学的手法を用いて検討する。 2. 椎間板組織をAF, NPに分離し, 酵素処理後、単層培養を行う。real time-PCR法を用いてmRNAレベルでのRANK/RANKL/OPG 系の発現を調べ、AF, NP間での発現量の比較検討を行う。また変性初期のサンプルに対してIL-1β投与を行い、RANK/RANKL/OPG 系の発現量の変化を検討する。 3. 培養細胞におけるRANK/RANKL/OPG 系の蛋白発現は蛍光免疫組織学的手法を用い共焦点レーザー顕微鏡にて評価する。
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