研究課題/領域番号 |
26861185
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
熊谷 康佑 滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (50649366)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 軟骨細胞 / イオンチャネル / 浸透圧変化 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
現時点では変形性関節症(Osteoarthrithis: OA)の治療戦略として変性軟骨組織の修復と発症予防という大きく2つのアプローチが存在する。申請者のグループでは昨年同様後者について軟骨細胞の恒常性維持機構に着目し、イオンチャネルを軸とした解析を行ってきた。特に今年度は細胞のアポトーシス誘導物質である炎症性サイトカイン(TNF-alphaとIL-1beta)を併用し疑似OAモデルを作成する事により実験を行ってきた。研究におけるターゲットとして軟骨細胞のみならず関節構成組織である線維芽細胞様滑膜細胞(fibroblast-like synoviocyte: FLS)をも利用し電気生理学アプローチだけではなく関与イオンチャネルの分子実体を明らかとする為に細胞容積変化やPCR、ELISAを併用し機能解析を行ってきた。 昨年度までに陰イオンチャネル(特にClイオンチャネル群)については電流変化を中心に低浸透圧環境暴露により炎症性サイトカイン群と非暴露群(コントロール群)間で有意差を認めており、現時点ではさらに研究対象を昨年度の軟骨細胞のみからFLSにまで拡大し、陽イオンチャネルも含め(特にTRP-familyやBKチャネルを中心に)解析を行っている。すでに陽イオンチャネルにおいても電流増大や遺伝子/タンパク質発現量に一部有意差を認めており、これらがOA初期の段階で(画像所見上関節変形が確認出来ない段階で)実際のところどのように相関しているかをリアルタイムで計測出来ないかとその実験手法について思案中である。一部実験に関しては文献を参考にsiRNAの使用や各種イオンチャネル阻害剤を用いて細胞容積変化を中心に測定をする方法を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟骨細胞とFLSに関して、申請者のかねてからの標的である容積感受性Clチャネル(ICl,vol)に加え、細胞の容積調節に関与が示唆されているTRP familyやBK channelにおいても解析を行い、電気生理学アプローチにおいては既に結果を得る事が出来ているため。また一部の遺伝子/タンパク質に関してはPCR/Westernblotting法によりその発現量の差を確認している。しかしながらICl,vol自体の分子実体に関しては未だ不明な点が多く、今後は過去の文献等を参考にまず分子実体の解明に挑戦し、その後浸透圧変化等の外的刺激に対しどのようなアプローチでリアルタイム解析を行うかを検討し、次年度以降の研究に反映を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在までに明らかにした各種イオンチャネルの容積変化(浸透圧変化)に対する反応結果を解析し、炎症性サイトカインによる疑似OAモデルの使用、それに対するsiRNAやチャネル阻害剤等各種薬剤に対する反応を数値化し、客観的且つ定量的に評価し(シミュレーション)モデル化を目指す。細胞シュミレーションは滋賀医科大学整形外科学講座・細胞機能生理学講座の協力の下、申請者自身が行う予定である。またLiverpool大学のRichard Barrett-Jolley博士のグループと協力しデータの解析、他施設を含めた研究者間での共用化に関してシステム構築を行っていく(一部に関してはまだクロースドな状態であるもののFileMaker等のソフトを用いてオープンソースとしての仕様を構築中である)。これらのデータを集計しシミュレーションモデルに応用を行う予定である。その結果として細胞外環境変化(浸透圧変化のみならずメカニカルストレスや薬物(ステロイドや鎮痛剤(NSAIDs)刺激等))に対する生理的応答を各種イオンレベルで解析できるシステムを今後確立することを目的とする。 また電気生理学的検討のみならず、各種イオンチャネルの分子実体解明に関し、Surrey大学のAli Mobasheri博士のグループとも協力を行い、データ補完を行う予定である。その際における外的刺激な対するリアルタイム反応を電気生理学アプローチ(パッチクランプ法)と分子実体解析の間でどのように相関解析を行うべきかについて今後検討が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの研究において電気生理学実験の電流測定/解析および試薬の購入、さらにはPCR/ELISA実験における抗体やプライマーの購入に実験費用を使用した結果、14020円という小額ながら繰越金が発生する結果となった。本来であれば申請通りの金額を使用する予定であったが、試薬等の代金計算において若干の誤差が生じる結果となった。 これに関しては無理に使い切るのではなく、次年度に向けきちんと予算配分を確認し使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今回の研究計画の最終年度という事もあり、研究結果報告の為の論文作成、また発表に伴う経費としての利用増加が予想される。すでに一部結果に関し研究発表や論文作成を予定しており、必要に応じて追加実験等に使用する予定である。
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