研究課題/領域番号 |
26861186
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
滝本 晶 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (00378902)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 椎間板形成 / 軟骨形成 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
脊柱の形成過程におけるPax1の発現局在を詳細に調べるため、マウス胚の組織切片においてin situ hybridization及び免疫染色を行った。その結果、硬節におけるPax1の発現は、胚発生13日目には椎骨間領域に局在し、この領域の細胞ではPax1とSox9が共発現していることが明らかになった。脊柱の組織構造が形成された胚発生16日目以降では、Pax1の発現は椎間板外線維輪に検出された。 軟骨組織特異的にPax1を発現するCol2a1-Pax1トランスジェニックマウス胚を詳細に解析した結果、Pax1を過剰発現した軟骨組織では、Sox9とCol2a1の発現は維持されていた一方で、Agc1、Ihh、及びCol10a1の発現は著しく低下していた。また、Col2a1-Pax1トランスジェニックマウス胚では、初期の軟骨組織形成は認められたものの、内軟骨性骨化は完全に抑制されることが明らかになった。 Agc1の転写制御におけるPax1の役割を明らかにするため、ゲルシフトアッセイにより解析した結果、Agc1の転写制御領域においてPax1が直接的に結合することが明らかになった。また、ルシフェラーゼアッセイの結果、Pax1単独ではAgc1の転写活性化を促進する傾向が認められた。 椎間板外線維輪細胞の培養法を確立するため、マウス及びラットの外線維輪から細胞を分離し、培養方法を検討した。その結果、ラットの外線維輪から分離した細胞では、増殖、継代、及びトランスフェクションの効率において、良好な結果が得られた。また、培養椎間板外線維輪細胞において発現遺伝子を解析した結果、Pax1やCol1a2に加えてSox9、Col2a1、及びAgc1等の軟骨細胞マーカーの発現も検出され、生体内の椎間板外線維輪における遺伝子発現は、in vitroにおいても維持されている傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脊柱の形成過程におけるPax1の発現局在の解析、Col2a1-Pax1トランスジェニックマウス胚の解析、及びAgc1の転写制御に対するPax1の直接的な役割について、予定通りの解析を進めることができた。また、椎間板外線維輪細胞の培養手法を確立することができたため、今後予定している分子生物学的な解析を進めるに当たって、大変有益であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に培養法を確立した椎間板外線維輪細胞を用いて、Pax1の過剰発現及びノックダウンの効果を検討する。さらに、pellet cultureにより軟骨分化誘導下におけるPax1の役割についても検討する。 Pax1が結合することが確認されたAgc1の転写制御領域において、Sox9結合部位との関係をゲルシフトアッセイにより詳細に解析する。さらに、Pax1とSox9の蛋白間相互作用について、免疫沈降により解析する。 また、当初の予定には含まれていなかったが、TALENを用いたゲノム編集技術によりPax1欠失マウスを作製し、形成過程の脊柱における軟骨及び椎間板形成を詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
良好な実験結果が得られ、実験の条件検討に使用する経費が当初の予定よりも抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子改変動物の作出と維持、及び実験試薬の購入に使用する。
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