研究課題/領域番号 |
26861192
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
乾 淳幸 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (70457092)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サルコペニア / 腱断裂 / 老化 / SAMP6 |
研究実績の概要 |
全身の骨格筋量の減少と筋力低下を特徴とするサルコペニアは高齢者のADLの低下に直結することから、近年その疾患の発生メカニズムについて研究が行われている。しかしながら、サルコペニア患者に腱損傷が生じた場合その起始である筋肉や腱の治癒過程にどのような影響が生じるかついては未だに知見は得られていない、老化モデルマウスを使用して、サルコペニアが腱修復に及ぼす影響について検討した。 生後20週までの若年マウス、及び生後24か月程度の高齢マウス、また早期老化モデルマウスとしてsenescence acceralated mouse P6 (SAMP6)とコントロールのマウスの系統としてSAMR1を使用した(N=8)。 全身麻酔下にこれらのマウスの右下肢に対してアキレス腱切離術を施行する。アキレス腱は踵骨付着部より切離した後に自然修復が起こらないように5mmの欠損を作成し、左下肢については腱切離を行わないコントロールとして使用したうえで、術後4週でマウスを安楽死させ評価を行った。当施設では老化したマウスを購入する事は困難である為、リタイヤマウスおよび若年のSAMP6マウスを購入し、自然老化するまで約10か月程度待機した。現在はマウスに外科的処置を施して順次安楽死させ、サンプルの採取を行った段階である。 手術時の所見として外表面はSAMP6では皮膚のただれなどが出現しているものが多く、個体間の体重のばらつきも多くみられ、体重が少ないものは同週齢のマウスに比べ脆弱な印象を受けた。手術前のアキレス腱の肉眼所見はSAMP6とSAMR1とでは明らかな差は認めなかったが、術後SAMP6群でもコントロールマウスでも同様にアキレス腱欠損部には脆弱な線維性組織での連続性を認めた。このことより、老化マウスであっても腱の切除部分は瘢痕組織にて修復されているが、その組織学的・分子生物学的特徴については2015年度に引き続き解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究では生後20週までの若年マウス、及び生後24か月程度の高齢マウス、また早期老化モデルマウスとしてsenescence acceralated mouse P6 (SAMP6)とコントロールのマウスの系統としてSAMR1を使用した。当施設では老化したマウスを購入する事は困難である為、リタイヤマウスおよび若年のSAMP6マウスを購入し、自然老化するまで約10か月程度待機した。現在はマウスに外科的処置を施して順次安楽死させ、サンプルの採取を行っている段階である。 今後、サンプルの組織学的・分子生物学的解析(免疫組織学的染色・リアルタイムPCR)などに数か月を要し、その後データのまとめや発表を行う予定である。2015年度の後半にはデータのまとめは終えていると考えられるので、実験の進捗状況としては順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究では生後20週までの若年マウス、及び生後24か月程度の高齢マウス、また早期老化モデルマウスとしてsenescence acceralated mouse P6 (SAMP6)とコントロールのマウスの系統としてSAMR1を使用し、アキレス腱部分欠損モデル(自然修復が起こらないモデル)について、外科的手術を終え、組織学的・分子生物学的解析を行う段階である。 今年度は、これらのマウスに対する外科的治療モデルとしてアキレス腱修復モデルを使用し、修復された組織の特性について解析を行う予定である。当施設では老化したマウスを購入する事は困難である為、リタイヤマウスおよび若年のSAMP6マウスを購入し、自然老化するまで約10か月程度待機が必要であるので、これらの実験については現在はマウスが老化するのを待機している段階である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はマウスの購入費と飼育費が大半であり、マウスが老化するのに大半の期間待機していた。動物飼育施設のキャパシティの問題から予定通りすべてのマウスを購入・飼育出来なかったため、一部を次年度に繰り越す予定とした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に前年度に購入しきれなったマウスや現在飼育中のマウスの飼育費を一部使用した上で、外科的手術が終わった群については、順次サンプルの免疫組織学的解析や分子生物学的解析を行い、さらにデータをまとめて学会発表や論文作成を行う予定である。これらの費用として助成金を使用する予定である。
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